藤沼湖決壊 記憶継承の慰霊碑除幕

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 東日本大震災による藤沼湖決壊から10年。決壊によって亡くなった住民が出た事実を風化させずに後世に伝えるための「藤沼湖決壊による慰霊碑」が完成し、11日午前10時から除幕式が犠牲者遺族や関係者ら多数参列して滝防災公園で行われた。犠牲者に黙とうをささげ、記憶の継承と悲劇の再発防止を深く誓い合った。
 慰霊碑は長沼地方を温かく見守り続ける霊峰高戸山をイメージし、川内村産白御影石と簀の子川から採取した自然石で建立した。碑文には藤沼湖決壊の概要とかけがえのない命を落とした8人(行方不明1人含む)のうち遺族が了承した6人の名前が刻まれている。
 除幕式は震災後から県内各地の復旧・復興に寄り添い続けている、フリーアナウンサーの大和田新さん(元ラジオ福島)が司会を務め、除幕は左側に慰霊碑完成まで尽力した実行委員会代表の柏村國博実行委員長と遺族5人の家族ら、右側に鈴木勝美実行副委員長、橋本克也市長、五十嵐伸市議会議長らが並び、合図とともに曳綱をした。
 黙とうに続いて柏村実行委員長が実行委員結成に至るまでの経緯を説明し、「ようやく慰霊碑が完成し、本日を迎えることができました。これから記録誌を完成させて実行委員会の結成目的は達成しますが、決壊による悲劇の事実は当時から消えることはなく、私たちの活動は後世へ伝えつなぐための始まりに過ぎません。そのことを心に刻み、改めて亡くなられた皆様に哀悼の意を表し、ご遺族の皆様に置かれましては、少しでも悲しみが癒えますようご祈念申し上げます」とあいさつした。
 また遺族代表の小針義男さんがあいさつした(あいさつ詳細は後日掲載)。
 来賓の橋本市長、五十嵐市議会議長、家久来克之県中農林事務所長(知事代理)、玄葉光一郎、上杉謙太郎両代議士があいさつした。
 藤沼決壊の記憶と事実を後世に語り継ぐ語り部として活動する五十嵐夏菜さん(長沼高2年)がこれまで研究成果を発表し閉式した。
 終了後は滝防災公園で「大震災と藤沼湖の記憶をつなぐつどい2021」を開き、加藤和記実行委員長のあいさつに続いて、出席者が献花台に花を捧げた。
 藤沼湖決壊は東日本大震災による震度6強の激震が長時間襲い、本堤が決壊し、出水期に向けて満水近い約150万㌧湛えた貯水が濁流と化して大量の土砂や雑木を巻き込んで簀の子川に流れ込んだ。
 滝・北町・城影地区を中心に濁流が流れ込み、多くの家屋や田んぼ、車両などを押し流した。現在は被災跡地に滝・北町・城影防災公園が造られ、決壊の記憶を伝えるモニュメントが建立されている。
 藤沼湖決壊による慰霊碑建立実行委員会は3年前に、同じような内水被害を受けた京都府亀岡市の平和池水害伝承の会から記憶をつなぐための会設立助言を受け、3年前に①決壊で亡くなった住民が出た事実と悲劇を風化させず、無念を受け止め、犠牲者の「生きた証」を碑に刻み後世に伝える②記録誌として実話や関係機関の資料掲載、藤沼湖の歴史やダム復元工事の資料などを将来へ伝えるための本を作る③いろいろな災害を想定した防災意識を持つことの重要性を伝える―の3つの目標のもとで発足した。