岩瀬キュウリ「スマート農業」2年目へ

農業

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    定植作業を行う橋本社長たち

 岩瀬キュウリのスマート農業に挑戦する須賀川市北山寺町の福島タネセンター(橋本克美代表取締役)は15日、吉美根の試験農場「エフシードラボ」で定植作業を行い、2年目の栽培へスタートを切った。初年度の成果を踏まえ今年は栽培量を1・7倍に増やすなどさらなる挑戦に加え、新規参入を検討する法人の研修も受け入れ、持続可能な新たな農業に向けた取り組みも加速が期待される。
 同社は昨年から同農場のハウスで、専用のソフトウェアによる気温に応じたカーテンの開閉や二酸化炭素の供給など総合的な施設環境管理を自動化しているほか、防除作業用ロボットによる作業軽減、肥料技術で安定した質の高い収量の確保などに取り組んでいる。
 その背景にはキュウリの産地としてかつて日本一を誇り、現在も国内有数の収穫量を維持しているものの、作業量の多さやコストパフォーマンスの悪さ、農業者数全体の減少などで後継者不足が深刻化している当地に対し、作業を軽減しながら安定した収益を見込めるビジネスモデルとしての岩瀬キュウリ作りを示すことで、現状の改善を図りたいという橋本社長の強い思いがある。
 今年は1株から育てるツルを2本に増やし、培地もロックウールという鉱物由来の素材に変更した。これまでの有機物の培地は時間の経過とともに保水性や排水性、通気性などの物理性が変わってしまうデメリットがあったが、ロックウールは無機物のため物理性に変化がなく、より安定化が見込める。
 今回定植を行った苗は5月半ば頃から収穫できるようになり、7月まで収穫を続ける。さらに今年は8月にもう一度定植し、当初想定していた4月から11月までの栽培サイクルに近づけ、反収50㌧を目指す。
 同社の取り組みに共感する異業種の法人も徐々に現れている。その中で今回研修に参加した男性は「露地栽培は作業も大変と聞いているが、ここのやり方なら自分たちも参入できると考えている。社会の変化により農家単位での農業は持続が難しくなってきているが、こうした取り組みが誘い水となり、須賀川の農業文化のため役立つものになると期待している」と意欲を燃やす。今後も収穫に向けた一連の業務を学び、企業としての参入を目指す。