稲田学園(小貫崇明校長)の6年生34人は「来年度使わなくなる自分たちのランドセルを海外に贈りたい」という児童の発案を実現させるため、地元企業のジェイラップ(伊藤大輔社長)などの協力を得て自分たちでトマトを栽培し、ドライフルーツにして学校祭「秋華祭」やflattoで販売することで資金を集める。
同校は9年間の学びとして「い」ろいろな体験を通し、「な」りたい自分を見つけ、「だ」い好きなふるさとに出会う学習活動を意味する「いなだスタディ」を掲げ、「ふるさとを愛し、社会や未来を拓く子ども」、生きる力の向上を目指している。
今回のきっかけは今年4月、6年生の岩崎成吾君が昨年度卒業した姉由佳子さんの取り組みを自分たちもやってみたいとクラスに発案したことだった。
由佳子さんは2年前、自主的な慈善活動として自分のランドセルをアフガニスタンに送り、その体験をアフガニスタンへの手紙として書いた作文「あなたへ」は昨年度の須賀川地方ユネスコ協会ユネスコ世界平和作文コンクールで協会連盟会長賞に選ばれた。
成吾君の発案から途上国や紛争地の現状を調べ、屋外でランドセルを机に勉強する同年代の子どもの写真などを見たクラスメイトらも企画に賛同した。
自分たちで送る手順や支援団体などを調べた結果、課題が立ちはだかった。ランドセルを海外に送る慈善団体の拠点は神奈川県にあるが、その送料が必要となった。
「自分たちの力でなんとかできないか」と児童たちは頭を悩ませ、各家庭でも相談したところ、稲作体験などで縁のあった地元のジェイラップが協力を申し出た。
そこで児童でも育てやすいトマトを栽培し、ジェイラップが無償協賛でドライ加工し、販売する案がまとまった。
トマトの苗を販売する渡辺苗屋も趣旨に賛同し苗40本を半額で提供した。
児童たちは「一人ひとり責任を持ってトマトを育てたい」と、31日に1人1苗プランターに植え付け、水の世話や脇芽取りなどし、夏の収穫を目指す。
またパッケージデザインも考え、商品説明書なども作成する予定だ。
さらに「思いは伝えないと伝わらない」という提案から、ランドセル送付時に英語で書いた手紙を添えることも計画している。「いざとなったら上級生にも手伝ってもらおう」という意見も出るのは9年間を同じ校舎で学ぶ義務教育校ならではだ。
1人の先輩の行動に影響を受け、また1人のアイデアの実現のためクラスメイト、学校、家庭、地域の企業まで巻き込む大きな活動へ動き出す姿はまさに同校の掲げる「いなだスタディ」の体現であり、その実現は地域全体の明るい未来を切り拓く児童たちの大きな可能性を予感させる。