スマート農業キュウリ好調 前年より収穫量倍増

農業

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    エフシードラボですくすくと育つキュウリ

 5月の低温や遅霜、今月の降ヒョウなど露地キュウリは全国的な被害を受け、価格が上昇している。そうした中、岩瀬きゅうりの安定した収益モデルの実証を進める須賀川市の福島タネセンター(橋本克美代表取締役)は、試験農場「エフシードラボ」で順調に栽培を続け、収穫から32日目にして収量は約12㌃で6894㌔、前年同期より約220%増加するなど好調である。気象条件等をリスクマネジメントできる農業の実践を示すことで、ビジネスとして成功可能な真に持続可能な農業のあり方を模索する。
 今年のキュウリは5月の低温などにより、東北、関東、九州、四国で収量が落ち込み、卸値が5㌔1700~1800円と高騰している。須賀川・岩瀬の露地キュウリは14、15の両日に降ヒョウ害も受け、JA夢みなみによると東部支店41件750㌃、大東支店16件247㌃、鏡石支店13件142㌃の被害が報告されている。
 一方エフシードラボは試験栽培開始の昨年より栽培量を1・7倍に増やし収量増加を図った。ハウス栽培で空調なども機械的に制御するスマート農業のシステムを導入し、一連の気象状況による影響はなかった。
 「連日、順調に収穫が続いています。7月には現在のキュウリを切って、8月に再度定植し、11月頃まで収穫を続ける予定です。来年は1月の定植も試験したいと考えています」橋本社長は語る。「安定的に儲かって、オフシーズンには休暇を取れる健全なモデルを示すことで、若い人が『自分にもできそう』と思ってもらえるようにしたいです」とも。
 スマート農業導入の最も大きな課題は初期投資。30㌃のキュウリ農場をスマート化しようと思えば、約5~6000万円は必要になる。「キュウリ農家も高齢化しており、実際に露地からハウスに舵を切るのは難しいでしょう。しかし若者であれば、十分元が取れると思います。各種助成制度もあるので、そこにたどり着く支援も必要ですね」と話す。
 エフシードラボでは現在、異業種から農業進出を目指す企業の研修も受け入れており、橋本社長によるとさらに複数の企業が手を上げているという。
 また収穫のアルバイトは、緑に囲まれ適度に運動もできて、作業もそれほど疲れないので、ストレス発散に向いているという理由から、子育て世代の女性からも人気が高い。
 「今後は障がい者の働く場としての農福連携や学生へのオンラインを含めた講習会などもできればと考えています。とにかく色々なものの受け皿となりうる農業の可能性をこれからも探っていきたいです」と地元農業のため情熱を燃やす橋本社長の挑戦は続く。

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