市文化センターに移されたブロンズ像「空へ」
須賀川市旧庁舎のシンボルであった故佐藤義重さん制作のブロンズ像「空へ(原題・AIKOの空)」は、9月からリニューアルオープンする市文化センターに移され、東日本大震災から10年の時を経て、正面と背面を向く1対の裸婦像が再び市民の出迎えと見送りを担うことになる。
「空へ」は市制施行30周年を記念し、市出身の著名な彫刻家であった佐藤さんに制作を依頼し、昭和60年4月、旧庁舎前広場に市民憲章碑とともに建てられた。
26年間にわたり市民を見守っていたが、東日本大震災で旧庁舎が甚大な被害を受け、一時的に場所を移して保管されていたが、広く市民の前に姿を見せる機会を失っていた。
なお震災時に2体のうち1体は倒れたものの修復を要する破損はなかった。
佐藤さんは大正9年、須賀川町荒町(現在の馬町)に生まれ、東京美術学校彫刻科で朝倉文夫、北村西望、建畠大夢に師事した。
22歳で第5回新文展に「空」が初入選し、戦後は須賀川市から東京都に移ってアトリエを構えた。
日展での活躍はめざましく、第4回日展で「靜炎」が初入選すると、以後入選15回、連続出品は50回以上と精力的に活動した。
また県内の公共施設等に多くの作品が設置され、特に故郷の須賀川には西川浄水場や公立岩瀬病院、市庁舎、牡丹園、市民温泉など多くの場所に作品が飾られている。
現在の市役所にある円谷幸吉選手の像も佐藤さんの作品のレプリカである。
佐藤さんは特に裸婦像を多く手掛け、中でも「AIKO」シリーズは多数の作品を遺した。
市文化センターに移された「空へ」もその一つだが、初入選作のタイトルが「空」であることを踏まえると、同作への思い入れが一段と強かったことが伺える。
胸の高さまで上げた左手は、何かに手を伸ばそうとする、あるいは手を振ろうとする直前のような格好で、視線はまっすぐ前に投げかけ、見る人を一歩立ち止まらせる。
同館にはそのほか、ロビーに「AIKO」、前庭に「虹」の像も飾られており、当地出身で戦後の彫刻界をけん引した佐藤さんにも再び注目が集まりそうだ。