岩瀬きゅうりのスマート農業化に関心を示す橋本市長
須賀川市の橋本克也市長は19日、福島タネセンター(橋本克美代表取締役)が市内吉美根地区で展開する試験農場「エフシードラボ」を視察し、岩瀬キュウリのスマート農業化に挑む最先端の現状に理解を深めた。
市は昭和46年から近年まで生産量日本一に輝くなど、全国有数の夏秋キュウリの生産地として知られる。
しかし後継者不足や生産者の高齢化も進んで生産量は減少しており、さらに今年の降ヒョウにみられるような異常気象や長く生産を続けることで生じる連作障害が課題となっている。
そうした中で、それら課題のクリアに向け取り組む同農場を視察し、今後の農業や支援のあり方などを検討することが目的。
橋本市長は橋本社長からエフシードラボの概要や露地栽培との違い、今後の展開などについて説明を受けた。
橋本社長は「キュウリ農家は一般にきついしもうからない。だからなり手がいなくなる。そこを変えていく必要があると考え、スマート農業化で省力化、収益安定化を目指している」と説明した。
同農場では約12㌃で今年60㌧の収穫を目指している。
環境に配慮した取り組みとして、窒素の再利用可も図る。肥料として使用される窒素は一般的な農場だと水に流され、そのまま環境汚染につながっていた。同農場では鉱物や植物由来の培地が地面と独立しているため、水を循環させればそのまま川などに窒素が流出する恐れもない。
また培地を独立させることは定植時の土の入れ替えの省力化、連作障害の回避などのメリットがある。
「来月は試験的に障がい者も働き手として受け入れる。また若い子育て世代も合間時間に働けて、ストレス解消にもなると好評だ。そうした雇用の場としての活用も今後進めていきたい」と橋本社長は話す。
佐賀県でも昨年からキュウリのスマート農業に参入し、焼却炉の排熱や二酸化炭素を活用する試みが成功していると説明を受けると、橋本市長も「須賀川地方衛生センター近くでもできるのでは」と興味を示した。
橋本市長は「生産を持続させていくのは産地の責任。この農場は先行している分、成功してもらいたいし、農家の皆さんにも見てもらいたい」と述べた。
橋本社長は「近年の異常気象を踏まえ、すべて露地栽培というのはリスクが高すぎるのがわかる。施設栽培に移行する際には、スマート化が絶対に必要だ」とした。
異業種企業も参入
福島タネセンターのエフシードラボでスマート農業の研修を受けていた須賀川観光タクシー(橋本康宏代表取締役)は経済産業省の事業再構築補助金の採択を受け、来年度からICTを活用したキュウリ栽培を始める。
コロナ禍で業界全体が大きな影響を受ける中、農業への参入で収益化と地域貢献を目指す。
農場はエフシードラボ近くの約2000平方㍍を使い、同施設と同じ専用のソフトウェアを使った環境管理システムの導入やツル下ろし式の栽培などでスマート農業に挑む。
橋本社長は「来年8月までに定植までもっていきたい。ちょうど19日に、栽培に必要な井戸水も出たと連絡を受けた。いろいろな巡り合わせで、何かの力がこの事業の後押しをしてくれているように感じる。絶対に成功させたい」と意気込む。
異業種企業の参入は当地が誇るトップブランド「岩瀬キュウリ」にもうれしいニュースだ。今後の進展に期待が集まる。