舞い上がる炎を静かに楽しむ来場者たち 牡丹会館で開かれた角谷さんの記念講演
須賀川の初冬を彩る風物詩の一つ「牡丹焚火(たきび)」は20日、市内外から約100人の俳句愛好者らが須賀川牡丹園中央広場に集まり、静かに炉を囲んで燃え盛る炎と火の粉の共演を楽しんだ。
牡丹焚火は多くの大輪を咲かせ天寿を全うした古木や枯れ枝に感謝を込めて火にくべる伝統行事の一つで、大正時代に当時の園主で俳人でもあった柳沼源太郎翁が親しい友人をを招き供養したのが始まりとされる。
初冬の季語として歳時記に収載されているほか、環境省の「かおり風景100選」にも選ばれている。
歴史小説家の吉川英治が須賀川を訪れた時に見たこの光景に感銘を受け、小説「宮本武蔵」の一幕にも登場するほか、原石鼎ら様々な文人墨客が作品を詠み残している。
同日は俳人協会理事で句集「奔流」、「源流」、「地下水脈」を発表、「未来図」同人の角谷昌子さんを講師に迎えて、「季語と取り合わせの効果―俳句鑑賞を楽しむ」の記念講演を牡丹会館で開いた。
夕方の牡丹焚火で橋本克也市長は「市が誇る牡丹焚火に多くの皆さんにお越しいただきありがとうございます。まさに五感を刺激する炎の行事であります。これからも伝統行事として受け継がれるよう市としても取り組んでまいります」と述べ、江藤文子桔槹吟社同人会長は森川光郎桔槹吟社代表が詠んだ「須賀川に火祭り二つ冬が来る」の句を紹介し、「命を全うした牡丹を供養する静かな火の祭りを最後まで堪能され俳句を一つ詠んでください」と歓迎のあいさつをした。
橋本市長、江藤会長、柳沼直三牡丹園保勝会理事長、講演会講師の角谷さんが火入れをし、桔槹吟社の佐藤健則さんと佐藤秀治さんが火男を務めた。
天寿を全うした古木は暮れ始めた夜空を焦がさんばかりに轟々と炎に包まれ、旺盛な火の粉が舞った。観覧者らは立ち上る火に歓声をあげ、しばらくすると火勢が徐々に落ち着き、炉のまわりを独特な香りが包み込む頃には熾き火が牡丹特有の青紫に変色し始め静かな感動を広げていた。
今年の牡丹焚火俳句大会はコロナ禍のため、23日まで郵送で作品を募集する。投句無料。郵送先は須賀川市小作田字新町台36―1、江藤文子方、牡丹焚火俳句大会宛。講師の角谷さん、森川代表ら桔槹主要同人らが選者を務め、来年1月の俳誌「桔槹」誌上で結果を発表する。