修理の完了を喜ぶ所有者の永山さん
須賀川市指定有形文化財の一つである旧清水山行法寺大日如来厨子は経年劣化による痛みや劣化から、大掛かりな保存修理を施し、黒漆が鈍く輝く本来の姿を取り戻した。修理事業が完了したことを記念し、6月5日まで市立博物館ロビーに特別展示している。所有者の永山祐三さん(87)=北町=は「これからも数100年後にも伝え残していくため、ご支援をお願いします」とコメントした。
行法寺はかつて北町に所在していた寺院で、その開基は白河風土記などから天文年間(1532~1555年)までさかのぼるといわれる。
厨子は本尊である大日如来像を安置する高さ185㌢、桁行70㌢、梁間70㌢の木造で、壁板に宝暦4年(1754年)の墨書があるため、この頃までには造られていたと考えられる。
様式は宮殿型と考えられ、軒に唐破風を付け、全体は黒漆塗、門柱には金箔を施す豪華な造りは、かつて同寺が大きな力を有していたことが伺える。
明治時代の神仏分離令を機に同寺は廃寺となったが、厨子や本堂、仏具や古文書などは境外地の清水不動内に合祀し、現在まで受け継がれている。
修繕は市の文化財保全事業と、文化財保護・芸術研究助成財団の文化財保存修復助成事業を活用した。永山さんと以前から親交があった国選定保存技術を有し、木工品修理を専門とする桜井洋さんが中心となり、令和2年度に屋根、3年度に本体と基壇を直した。
修理を終えた厨子は屋根の枡組に蘭・竹・菊・梅からなる四君子の精緻な蒔絵なども補修され、金箔を押した上、歴史を感じさせる古色仕上げで整えた。
厨子はこれまでも修理を重ねており、昭和20年代には当時須賀川に疎開していた彫刻家の山崎朝雲氏が修理を手掛けたとされる。
今回の修理を担った桜井さんは、調和の取れた装飾やかつての修理技術を称賛した。
特別展示は厨子のほか、修繕前の厨子の一部を並べている。
観覧料は厨子のみ観覧する場合は無料、常設展示や企画展も観覧する場合は大人200円、大学・高校生100円必要となる。
問い合わせは市文化振興課(℡94―2152)まで。