キュウリの定植作業に汗を流す従業員たち
後継者不足や東日本大震災・原発事故、さらにここ数年は降ヒョウなど異常気象により大きな打撃を受ける須賀川市の「岩瀬キュウリ」。農業を通じて地域に恩返ししたいと須賀川観光タクシー(橋本康宏代表取締役)は越久地内に2160平方㍍のキュウリ農場を整え、26日は定植作業に汗を流した。農場はビニールハウスにICT環境を整備し、スマート農業による効率化・省作業化を図っており、1年間で100㌧の出荷を目指す。
須賀川市は全国有数のキュウリ産地として知られ、岩瀬キュウリはかつて日本一の出荷量を誇っていた。しかし後継者不足などの問題が続き、東日本大震災後はさらに厳しい状況に陥り、平成28年以降は伊達市に日本一の座を譲っている。
こうした中、市内では令和2年に福島タネセンター(橋本克美代表取締役)がスマート農業を導入した岩瀬キュウリのほ場(エフシードラボ)を試験的に整備し、効率化・省作業化が十分に図られ、品質の良いキュウリを栽培できることを実証した。
福島タネセンターの橋本社長と旧知であった須賀川観光タクシーの橋本社長は、そうした取り組みを知り、昨年1月に農業への参入を決心したという。自らエフシードラボで研修を受け、ノウハウを学んだ。
さらに農産物を栽培する上で必要となる知識を一から学習したほか、経済産業省の事業再構築補助金の採択を受け、参入に向けた下準備を整えた。
26日の定植作業は橋本社長を含め社員とパート従業員8人が、3648苗を定植した。1つの苗から2本のツルをつる下ろし式で栽培する。
福島タネセンターの橋本社長をはじめとするスタッフらも応援に駆けつけ、作業をサポートした。
ほ場は専用のソフトフェアで気温や湿度など自動的に管理される。また防除用のロボットも導入し、作業負担を軽減する。ハウス栽培のため降霜や降ヒョウの心配も少ない。
定植したキュウリは7月中旬頃から収穫できる見込みで、12月頃まで収穫を続けたいという。
須賀川観光タクシーの橋本社長は「農業で地域に貢献したいという思いでスタートさせた。農業はやればやるだけ成果に結びつく点がタクシー業界とは異なり、大きな夢や希望につながり、それが広がっていくと感じる。成功させ、キュウリ以外への作物を含めた規模拡大や人材育成、障がい者雇用、大企業のダブルワークなどのニーズにも応えられるようにしたい」と目標を掲げる。
当地が誇るトップブランド「岩瀬キュウリ」の新たな躍進に期待が集まる。