後藤さんら世話係になつくヤギ
天栄村の鳥獣被害防止に向けた緩衝帯管理実証事業は今月から本格的にスタートし、20日からヤギ2頭を白子志古山地内の遊休農地約1700平方㍍で飼育し、イノシシやシカなどが現れる頻度の軽減効果を確かめる。
村では昨年度、ニホンジカ71頭、イノシシ58頭、ハクビシン28頭、ツキノワグマ13頭を捕獲した。
イノシシは平成30年度102頭、令和元年度125頭捕獲し、一昨年度は322頭とピークに達した。昨年度の捕獲頭数は減少したが、未だ農家への被害は少なくない。
ニホンジカは平成30年度13頭、令和元年度16頭だったが、一昨年度は48頭で、昨年度はさらに捕獲数が増えている。
農業を基幹産業とする村にとって、鳥獣被害対策は急務となっているが、一方で鳥獣被害対策実施隊の高齢化、人員の減少が懸念される。
同事業は鳥獣被害の原因となる野生動物が畑に出没しにくくなる緩衝地帯をヤギの力で整備できるか確かめる。
野生動物の多くは、林やヤブなど自らの身を隠せる場所から近い畑などに出没する傾向がある。
村内は農業者の担い手不足や高齢化から農地全体の約17%にあたる281㌶が耕作放棄地になり、その面積は年々増加している。
雑草が生い茂る耕作放棄地を除草することで、野生動物が身を隠せない緩衝地帯となり、結果として近隣の畑の鳥獣被害軽減を目指す。
ヤギは村が2頭をリースし、村シルバー人材センターが朝と夕方に餌を与えるなどの世話を約10人のローテーションで行っている。
同地は村内の鳥獣捕獲頭数が上位であるため選んだ。
村はヤギ導入費や管理費、飼育場を囲うためのワイヤーメッシュ購入、施工費用を負担した。
世話係の一人である後藤一生さん(75)によると、母ヤギ「アップ」と息子ヤギ「ロロ」はいずれも性格が穏やかで人懐こく、いつものんびりと雑草を食んでいる。
飼育開始から1週間が経ち、後藤さんらの顔を覚えたのか、鳴きながら甘えるようにすり寄る姿もみられた。
今後、実証により効果が確認されれば、鳥獣被害の軽減のみならず、副次的効果として、農地周辺の法面、畦など、農家の労力が大きい除草の手助けとしての活躍も期待される。