試験的に動かす第2世代の収穫ロボット
キュウリの一大産地である須賀川市だが、生産者の高齢化や担い手不足が進行し、生産農家や生産量も年々減少している。「キュウリの生産地を守りたい」と最先端の技術を使った農業改革に取り組む市内北山寺町の福島タネセンター(橋本克美社長)は、スマート農業で課題解決を目指すベンチャー企業AGRIST(アグリスト、本社・宮崎県)と連携して、キュウリ栽培のネックである収穫を担うロボットの開発に取り組み、来年にもモニター販売可能なほどの完成度までこぎ着けた。
これまでタネセンターはキュウリ栽培の省力化・高収益化を目指し、ハウスでのツル下ろし栽培において水や肥料、湿度、温度等をモニターで監視しながら自動調整するシステムなどの実証実験を進めてきた。
取り組みは各方面から注目を集め、異業種の農業参入をけん引するオピニオンリーダー的な役割を担っている。
収穫ロボットはアグリストが以前から開発を進めてきたものだが、栽培の実情に合わせた調整をするため今年3月からタネセンターとの共同研究に着手した。
橋本社長は「どの業界でも人手不足は深刻化しており、いずれロボットが必要な未来が訪れる。実用にはロボット側、農家側双方の歩み寄りと最適化が必要であり、当社では実証の場と知識を提供しながら、そのベストを一緒に探っている。いずれはロボットに最適化したハウス農場で、専用に開発した品種を自動栽培する、というあり方になる可能性もある」と未来を見据える。
現在第2世代の収穫ロボットは、触手的なアームで実と茎、葉を対象の質感により判別する。実は上部4分の1を調べることで全体の太さや長さを確認し、条件に合致したものを収穫する。
まだ速度や正確性に課題はあるが、それらを改善した第3世代の開発を進めており、来年にはモニターとしての購入者を募り、さらにデータを集め、未来での一般化を目指す。
タネセンターはさらに、電子機器などの開発会社マクニカ(本社・横浜市)とも連携し、太陽光を補助するLEDの開発も進めている。
栽培環境の多くを自動化してきたが、太陽光だけはコントロールできず、それが夏と冬の収量の差となっていた。開発中のLEDを利用することで、冬場の収量確保につなげる考えだ。
これらの取り組みを広く知ってもらうため、タネセンターでは学校や企業・団体の見学や研修を幅広く受け入れている。
先日は県農業総合センター農業短大の野菜経営学科1年生16人の研修を受け入れ、先進的な取り組みについて紹介したという。
橋本社長は「いずれ農家のオーナーは、農場の見回りロボットから送られる写真やデータをもとに判断を下すだけ、という仕事のあり方になるかもしれない。若者や異業種の興味をひいて参入してもらうため、農業のイメージを変え、この須賀川の産地を守っていきたい」と情熱を注ぐ。