令和元年東日本台風から6年 被災地の「今」を知る 丸田町・館取町・茶畑町


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    マラソン大会のコースや周辺道路を清掃する友愛会

 多くの被害をもたらした令和元年東日本台風から6年が経過した。多くの住宅が浸水し、2人の尊い命が奪われた苦い経験を持つ須賀川市丸田町、館取町、茶畑町はハード面での整備も一定の完了を迎え、防災力を強化した上でかつてに近い生活が戻りつつある。
 令和元年10月12日から13日にかけて大雨を降らせた台風により、同地区住民の約8割が被害を受けた。地区内での生活再建をあきらめる人もいた中で、有志らが同年12月に「安全で安心して暮らせる町づくりの会」を発足し、堤防のかさ上げや高排水能力ポンプの設置などを行政に求めた。
 西川中央公園防災施設の整備をはじめ、ほとんどの要望事項が実現し、仮に同規模の水害が発生しても内水による被害のリスクは大きく軽減された。
 また台風被害に次いで生じたコロナ禍による地域行事の休止にも見舞われたが、老人クラブ友愛会の役員が会員宅を季節ごとに訪問し、使い捨てカイロなど差し入れしながら見守り活動を続けるなどして地域の絆を維持し続けた。
 地区内で家を取り壊し、離れていった世帯も約30件あったが、家を建て直して戻ったり、新たに移住し町内会に加入する世帯もあった。
 コロナ禍の落ち着きを受け、旧来の役員は世代交代を迎えた。
 新役員らは秋まつりや敬老会などの行事を再開させながら地域コミュニティの回復を図っている。
 役員らは「防災的にハード面はほぼ完成したと言ってよい。空き地が残っていることが今後の課題ではあるが、もともと駅やスーパー、病院なども近く、利便性が高い土地であるため、安全性が周知されれば住民も増えていくはず」と期待を寄せる。
 地区内は円谷幸吉メモリアルマラソンのコースでもあるため、ランナーたちに心地よく走ってもらい、住みよいまちを周知するため、17日には友愛会がゴミ拾いで力を合わせた。
 今後も育成会の芋煮会なども予定しており、防災訓練等についても既存の行事と組み合わせた実施を模索していきたいとしている。
 町内会や老人クラブへの加入促進も課題の一つだが、長年にわたり友愛会の会長を務めた七海清八さん(82)によると、同会には水害で地区を離れた後も絆を残し続けたいと加入し続けている人もいるという。全国的にも高齢者の孤立が課題となる中で、七海さんは「町内会も老人クラブも早いうちから加入し、人のつながりを作ることが大切。孤立を感じるようになってから入っても、馴染むことは難しいが、早く入ればそれだけ楽しいことが増える」と語った。