火曜コラム(紙面掲載 2025年3月25日)


「春の入り口で心と体を整える」

 三寒四温が続き、春の足音が少しずつ聞こえてくる3月。
 朝は霜が降りるほど冷え込む日もあれば、日中にはコートを脱ぎたくなるような暖かさに包まれる日もあります。庭先では梅の花がほころび始め、やわらかな陽射しに気持ちもほぐれてくる頃ですが、実はこの季節、体と心にとっては油断のならない時期でもあります。
 診療所の診察室では、「なんとなくだるくて朝がつらい」「鼻がむずむずして仕事に集中できない」といった声が増えてきました。
 寒暖差の大きさは自律神経に影響を与え、体温調整や睡眠のリズムを乱しがちです。
 また冬の疲れが出てくるのもこの時期の特徴で、特に高齢の方や慢性疾患をお持ちの方は要注意です。
 さらに花粉の飛散がピークを迎えアレルギー性鼻炎の症状が強く出る方も増えています。
 この地域ではちょうどこの3月、農作業の準備に入る方が多くなります。
 土起こしやハウスの手入れなど体を動かす機会が増える一方で、寒さが戻ると関節や筋肉の痛みを訴える方も少なくありません。
 冬の間に動かしていなかった身体を一気に使うと、思わぬけがにつながることもあります。作業前の準備運動やこまめな休憩と給水を心がけ、無理のない範囲で作業を進めてください。
 この季節はまた卒業や入学、異動など、生活の節目を迎えるご家庭も多く、環境の変化が心に与える影響も見逃せません。
 特に長く続いた冬の閉塞感からの解放というポジティブな心と、新しい学校や職場など先の見えない不安というネガティブな心が交錯することで、気分が落ち込みやすくなる方もいます。うつ症状のような状態が長く続く場合は、「気のせい」や「我慢」で済ませず、医療機関に相談することも大切です。
 みなさんの周囲にそのような方がいたら、優しく声をかけて話を聞いてあげたり、心療内科への受診をすすめてください。
 健康を守るためには、「早めに気づくこと」「こまめに対応すること」が何よりも大切です。
 例えば花粉症の症状が出始めたら、市販薬で済ませず、かかりつけ医に相談して自分に合った治療を受けること。あるいは最近なんとなく疲れが取れないという方は、血圧や血糖値など、基本的な健康チェックを受けてみるだけでも、安心材料になります。
 3月は冬の名残と春の兆しが交差するので、思いのほか体にとって負担の大きい季節です。無理をせず、自分の体と心の声に耳を傾けてメンテナンスをしてください。
 春を軽やかに迎えるために、今こそ自分の体と心を見直し、少し早めの「春支度」を始めてみてはいかがでしょうか。