天栄村で60代男性がクマに襲われケガ 朝夕は特に注意を


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    道の駅の来店者に注意を呼びかける県職員

 県が中通りと会津地方に「ツキノワグマ出没特別注意報」を発令する中、2日午前11時半頃、天栄村羽鳥高戸谷地内で神奈川県の60代男性がクマに襲われ重傷を負う事案が発生した(詳細はページ下部)。村鳥獣被害対策実施隊の揚妻昭佳隊長は「一度でも人を襲ったクマは人を恐れないとも言われており、十分な警戒が必要だ」として、見回りなど強化している。県内ではクマの目撃情報が過去最多のペースで寄せられており、特にクマが活発に行動する朝夕の時間帯は注意が求められる。
 人がクマに襲われるのは今年に入って県内で3例目。天栄村内では少なくとも過去10年、クマによる人的被害はなく、役場に長く務める職員も「入職以来30年は聞かない」と話す。
 一方で、湯本地区をはじめ村内におけるクマの痕跡は年々増加していた。
 地区住民によると、山林ではクマのフンやハチの巣を荒らした跡も見かけるほか、杉の皮がクマに剥がされ、枯れてしまった木が山全体に広がっているという。また、民家から約100㍍の杉の木が同様の被害を受けていたり、桑の実が食べられた痕跡も見つかっている。
 揚妻隊長によると、今の時期はクマが子育てを終え、母クマと独立したクマとがそれぞれ行動するようになり、その行動範囲が広がっているという。
 実施隊は被害の知らせを受け、9人が現場に駆けつけ、今後の対策など話し合った。しかし「行動範囲が絞れないので、罠をかけたりするのは難しい」と頭を悩ませる。
 今後1週間は見回りを強化するほか、村も防災行政無線で警戒を呼びかけている。
 被害発生のわずか1日前、県は注意喚起のため、道の駅季の里天栄で街頭啓発活動を実施していた。
 担当者によると、夏は山の食べ物が減るため、クマが人里近くまで行動範囲を広げるという。特に最近は人馴れしたクマが里地に頻繁に降りてくる傾向もある。
 クマと遭遇しやすい場面として、登山時や散策時、朝夕の農作業時、朝夕の散歩時、河川敷の4つを挙げる。
 遠出する際などはクマの目撃マップ(https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/16035b/tukinowaguma-mokugeki.html)を活用するほか、複数人での行動を心がけること、熊鈴やラジオなど音のするもので自分の存在をクマに伝えることなどが重要となる。
 またクマは餌に対する執着が強く、一度味を覚えると再度出没する可能性が高まるため、屋外に生ゴミや野菜、果物、ペットフードを置かないよう注意を呼びかける。

神奈川県男性がケガ

 2日午前11時半頃、天栄村羽鳥高戸屋地内で釣りに来ていた神奈川県の60代男性がクマに襲われ、顔の右側を引っかかれたほか、左腕を噛まれるなど大ケガを負った。
1人で現場を訪れていた男性は消防署に通報し、ドクターヘリで福島市の病院に運ばれた。重傷の模様。
須賀川署は自治体と情報を共有しながら、パトカーで現場付近の警戒と広報を実施し、近隣住民に注意を呼びかけている。