震災特別連載 3・11東日本大震災 歩みつづけて vol 2


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文化財の保護 ②

 東日本大震災発生から約20分後、150万㌧の貯水をたたえた藤沼湖の本堤が決壊し、簀の子川に多くの土砂や立木を巻き込んで下流域を次々と濁流が飲み込んだ。北町地区にあった市文化財収蔵庫も被害にあった施設の一つだった。

 旧養蚕事務所を改装した収蔵庫には、土器類など考古資料、発掘調査図面類、民具類、須賀川市史・長沼町史関連史料などが平成21年から多数並んでいたが、濁流で飲み込まれ多くの貴重な史料の数々が流出してしまった。

 当時の文化財レスキューにあたった管野和博市文化振興課学芸員(44)は「正確な数は今も分かりませんが、現存しているのは半数以下になったかもしれませんね」と話す。

 収蔵史料はコンテナ保存分が阿武隈川下流域から発見されたものもあったが、約300箱近くが流出した。

 当時の遺物搬出作業は同年3月29日から始まり、ふくしま歴史史料保存ネットワーク(ふくしま史料ネット)、文化庁文化財レスキュー(東北地方太平洋沖地震被災文化財等救援委員会)なども複数回の合同作業に加わった。

 回収した史料は泥に塗れた状態で写真撮影し、水洗・梱包・真空凍結乾燥などを経て平成25年に歴史民俗資料館脇に新設された遺物収蔵庫に移設された。

 発見された史料の中には年代や出土遺跡・遺構が記された部分が遺失したものも一定数あり、照合作業は難航を極め、60箱以上が今も未分類のままの状況になっている。

 今回の事象は資料保存の面だけをみると大きな損失ではあるが、震災以降発生した県内各地の水害事故からの文化財レスキューに多くの貢献を果たし、一石を投じる結果となった。

 

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