震災特別連載 3・11東日本大震災 歩みつづけて vol 3


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文化財の保護 ③

 東日本大震災は多くの公的文化財だけでなく、個人蔵の貴重な資料の数々にも大きな損害を及ぼした。震災後にまちなか復旧にあたった建設業者は「ほとんどの蔵を倒壊などで取り壊したが、跡地に再建したものは少なかった」と話す。

 震災直後倒壊の危険があった朝日稲荷神社にも、当地を代表する画家の大野松岳や安田田騏が描いた巨大絵馬、地元の酒屋らが奉納した額、病気快癒、養蚕関連など大小さまざまな絵馬約70点が収められていた。

 神社から保管依頼を受けた市立博物館も震災被害を受けており、その前からも手ぜまな収蔵スペースに新たな資料を多量に受け入れる余裕はなかった。

 地元の歴史研究家らとも相談の上で、県立博物館に収蔵を依頼し、平成23年6月9日に2博物館共同で絵馬などの保存・移設作業を行った。

 当時の判断について管野和恵学芸員は「地元の文化財を博物館で受け入れ、対応出来なかったことは今も大きな反省点。『文化財がどこにあろうと、形として残っていることが大事』だと割り切り、現実を受け入れるしかなかった」とくやしげに述懐する。

 冒頭でふれた個人蔵の資料は、「蔵を再建するまで」などの期間限定で一時預かりしたものもあったが、返却の見込みが立たない資料は預かれないことも少なくなかった。

 朝日稲荷神社の絵馬などは、平成24年5月に県立博物館が収蔵展を開き、地元からも多くの愛好家らが足を運んだ。

 市立博物館でも平成25年9月に「震災から救出された須賀川の歴史展」を開き、絵馬26点を展示紹介し、そのまま市が保管委託を受けている。

 震災後は博物館友の会とも連携して文化財の情報交換にも努めており、これらの活動が文化財を守る機運醸成につながればと期待される。