震災特別連載 3・11東日本大震災 歩みつづけて vol 5


  • 画像

まちなかの崩壊と再建 ②

 東日本大震災は見慣れた風景を一変させ、我々を非日常の渦の中へと叩き込んだ。先祖たちが眠る墓地は見るも無残に倒壊し、一時は雨露をしのぐブルーシートが被せられたままの状態が続いた。

 須賀川総鎮守の神炊館神社も例外ではなく、参道の両脇に並ぶ石灯籠や石段の一部が崩れるなど大きな被害をもたらした。

 多くの総代や氏子、市民らの協力で従前の光景が戻り、平成28年には子どもたちの太鼓演奏などコミュニティ創造の場として神楽殿を新築した。

 また、戦国時代に須賀川を治めていた二階堂氏の居城跡に建設された二階堂神社も石鳥居が倒壊し、石垣が崩れ、社殿も大きな損傷を受けた。

 神社を管理していた宮先町町内会の小針弘士前会長(80)は、地震直後の見るも無残な様子に「再建は難しいと思った」と振り返る。

 取り壊しも覚悟したが、町内会の話し合いで「まちなかには歴史ある二階堂神社が必要だ」との声が多数あがり、若杉工務店の協力で当初は修理する方向で話を進めていた。渡邉達雄商工会議所副会頭(現会頭)の協力を得て、「復興を進める会」を立ち上げ、市全域に再建協力を求めた。

 須賀川を象徴する同神社には多くの市民から篤志が寄せられ、ヒノキ材や屋根に銅葺きを使うなど立派な社殿を平成27年に新築することが出来た。

 完成を記念して、町内の故・前田正彰さんが描いた神社の絵を染め抜いた手ぬぐいを落成記念イベントで関係者に配布した。

 新築なった平成27年には4年ぶりに二階堂神社御祭礼を境内で催し、松明あかしの御神火奉受式も社殿で執り行えた。

 小針さんは当時を振り返り、「古い神社をつぎはぎだらけに治さなきゃと一時は諦めていたが、多くの皆さんのおかげで町内会も後世に誇れる神社が完成しました」と笑顔を見せた。