震災特別連載 3・11東日本大震災 歩みつづけて vol 6


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がんばるぞ鏡石

 10年前、終わりの見えない復興への道を歩くため、「立ち上がれ」「負けない」など様々な言葉が掲げられた。そうした中、鏡石町役場にも1枚の大きな応援旗が飾られた。「がんばるぞ!鏡石 I?かがみいし」の力強いメッセージの周りには、地元の小学生らのエールや将来の夢など寄せ書きが並び、未曾有の災害からはい上がるため、町民の思いを一つにする役割を果たした。

 応援旗をまとめて企画したのは鏡石町四区の有志である添田孝利さん、広瀬茂さん、斑目重徳さん、田代秀明さん。4人は消防団として町内の被災地区を回り、ガレキやブロックの片付けに奔走したほか、もっと力になりたいと自発的に避難者の炊き出しを行った。

 添田さんは「ただ、自分たちの町を自分たちで守りたかった」と当時を振り返る。「町の将来を担う子どもたちを元気づけるためにも、立ち上がる大人の姿を見せなければ、という思いでした」。

 当時は紙が不足していたが、印刷会社の協力でポスターも作成し、街中の商店に掲示した。「がんばるぞ鏡石」を合言葉に、町は一つにまとまった。

 震災から10年が過ぎようとする今も、4人の活動は終わっていない。自転車を動力とするカキ氷機を自作し、最初は避難住宅の慰問に使用したが、好評を受けあやめ祭りなど町内のイベントにも出店を続けている。収益は福祉施設などに寄付しているという。

 「悪夢のような災害でしたが、消防団に対する町民の見る目も変わり、自主防災の意識も高まったように感じます」と添田さん。「これから町もさらに変わっていくと思いますが、子どもたちが気軽に帰って来れる温かい町にしていくため、力を合わせていきたい」と目を細めた。