風評被害と農業の復興①
福島第一原発事故で発生した放射性物質の影響により、農産物の出荷停止や採取制限が出された。
JAに米やキュウリを出荷している須賀川市袋田、複合経営農家の樽川良雄さんは、キュウリ15㌃、水稲5㌶を手掛けている。袋田農地・水・環境を守る会の初代会長として、農用地の集積や耕作放棄地の解消、地域ぐるみで地域の活性化に取り組み、農業所得の確保と経営安定を図ってきた。
樽川さんは原発事故で何が起き、何がなんだか分からない状況の中、床土をつくるために取っておいた腐葉土から放射性セシウムが検出され、汚染されていることを初めて知った。
それから目に見えない放射性物質の恐怖との終わりの見えない闘いが始まった。JAや農業普及所と連携を図り、徹底したモニタリング検査などを学び、不安の中で試行錯誤を重ね、常に安全な農産物を出荷するため、放射性物質検査を委託し、市農産物等安全・安心確保対策事業取扱要領を遵守し徹底した管理を心がけたという。
農家に生まれ、土地や畑を守るためにも、事故から10年を迎える今もハウス内の土壌分析検査をやめることなく、今までの経験を活かし生産を続けている。
「個人の力だけではどうにもならない、JA組合員として、東京電力に対する損害賠償請求、農業施設や機器の被害などへの支援、助成を受けるには、JAに支えられたからこそ復旧できたと感じる。大きな損害があっても、仲間がいたお陰で生まれ育ったこの地で頑張って来られた」と振り返る。
樽川さんは「JA協力のもとで基準値に基づく放射性物質検査を徹底、食品安全を守り続けたからこそ、どこよりも安全・安心の農産物と誇れるし、これからも農産物の生産に地域と一緒に全力を注ぎたい」と話している。