震災特別連載 3・11東日本大震災 歩みつづけて vol 9


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風評被害と農業の復興③

 須賀川市森宿、渡辺果樹園の渡辺喜則さん、佳子さん夫妻は、原発事故による放射性物質の影響で10年経過した今も、風評被害の払拭に取り組んでいる。

 和梨2・7㌶、ル・レクチェ0・7㌶、モモ1・3㌶を丹精こめて栽培し、顔の見える生産者として元気を発信し、自宅での販売も行っている。

 震災当時は両親と従業員らが自宅南側の果樹園の肥料散布中で、余震におびえ、しゃがみ込んでいたという。自宅2階の瓦が滑り落ち、車もつぶれてしまった。

 山形の果樹農家に一時的に子どもと避難したが、戻ってからは放射能の影響を危惧しながらも、滞っていた果樹の摘蕾や摘花の農作業を続けた。

 2006年に農産物の自然環境維持増進を基本とした、生産の原則に基づく「特別栽培認証」を取得しており、特別栽培の取り組みとしての土壌や水質の分析、放射能検査、衛生検査などを実施し食の安全や環境保全に努めていたため、震災後もいち早く土壌や果実の放射性物質の検査を行うことが出来たという。

 検査をクリアした商品には出荷合格の表示を箱に添付するなど、消費者の不安払拭に努め、取引先の業者からは信頼を得ることができたが、直販の贈答用の出荷数は減少した。

 2016年に第65回全国農業コンクールで名誉賞(農林水産大臣賞)を受賞、2018年に第三者認証JGAPを取得した。

 震災からの道のりは大変だったが、JGAP取得に向けた取り組みで働く環境づくりや人の安全を見直すことができたという。

 渡辺夫妻は「これからも年に一度の収穫を楽しみにしているお客さんの期待に応えられるよう、安全・安心でおいしい果物づくりを進め、須賀川の果樹農業を絶やさないため、若い世代の育成にも力を注ぎ、あこがれる職業にしたい」と未来を見据える。