震災特別連載 3・11東日本大震災 歩みつづけて 特別編・上


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藤沼湖決壊から10年 ①

 東日本大震災による藤沼湖決壊で当時中学2年生の林萌子さんが命を落とした悲惨な事故から10年。決壊現場の一つでもある旧滝地区住宅地に防災公園が造成され、決壊犠牲者のための慰霊碑は今年1月に完成し、今月11日に除幕式がしめやかに行われた。
 慰霊碑には決壊の概要を記した碑文のほか、犠牲者8人(行方不明者1人含む)のうち6人の名前が刻まれた。林さんもその中に含まれている。
 「あの日もご飯を食べてから一緒に遊ぶ約束をしていたのに…。あんな事になるなんて思ってもいませんでした」と当時を振り返るのは、同級生で同じテニス部に所属していた緑川知矢子さん(24)。
 地震の直前までメールのやり取りをしていたそうで、最後に林さんから送信された一文は「怖い。助けて」。震災後の混乱もあり受信したのは3、4日後だった。「(決壊現場に行って)彼女が感じた恐怖を改めて感じました」と話す。
 林さんが水に飲まれたとの一報は、震災当日に部活顧問と部長からの安否確認で知った。「とても明るい性格で男女関わらず友だちが多い子。いつも笑顔で楽しそうに、エネルギッシュで大胆なプレーが魅力的でした」。彼女を欠いたクラスは暗く沈みきっていた。
 遠く離れた二本松で遺体が発見されたのは事故から1カ月半以上過ぎてから。「どこかで元気でいるかな」と希望を抱いていたこともあり、見つかったことの安心感よりも、改めてどん底に突き落とされたような心境だったと振り返った。