震災特別連載 3・11東日本大震災 歩みつづけて 特別編・下


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藤沼湖決壊から10年 ②

 林さんの告別式は好きだった曲や物でいっぱいに飾られ、部活の仲間たちでお母さんを少しでも元気づけようと話を聞きに行ったと緑川知矢子さんは述懐する。彼女との思い出を振り返り、涙を流す生徒も多かった。
 秋の長沼まつりには毎年、長沼中3年生が巨大ねぷたを手作りして参加していた。その年のねぷたは裏面(鏡絵)の女絵に林さんが好きだったヒマワリ柄の浴衣を着た20歳の彼女の想像図をデザインした。
 作業中は何度も意見を出し合い、少しでも現実の林さんに近づけるように心を砕いた。
 まつり本番では天国の林さんに届けとばかりに全員でハネトになって盛り上げ、よさこい踊りを元気いっぱいに披露した。
 その後も文化祭ではねぷたの小型レプリカを展示したり、修学旅行でも林さんの写真と一緒に記念撮影する生徒もいた。
 中学校卒業式後はテニス部の仲間で集まり林さん宅を訪れて卒業を報告し、全員の寄せ書きとぬいぐるみをプレゼントした。高校卒業式もめいめいの制服姿のままで卒業報告に訪れている。
 緑川さんは卒業後も林さんの誕生日など定期的に墓参りしている。「ヒマワリが飾られていると『(同級生の)誰か来たんだな』といつも思い出しています」。
 「幼稚園のころからなりたい職業を夢見ていて、萌子さんはずっと応援してくれていた。私は夢を叶えることができた。今も彼女のことを考えると胸にいろいろな思いがこみ上げてきます」と話す。
 震災から10年が過ぎ、大きな地震が来るたびに「今も乗り越えきれてないなと感じます」と緑川さん。近いうちにまた林さんのお墓参りに行って、「あれから10年の思いなど伝えたいことがいっぱいあります」とも。

(文責 特別編上・下=笠井隆雄)

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