火曜コラム(紙面掲載 2021年7月6日)

三浦 純一


在宅医療について

 厚生労働省は2017年に国民に対して、人生の最終段階で医療・療養を受けたい場所について調査を行いました。
 すなわち、末期がんなどと診断され、回復の見込みがなく、およそ1年以内に死に至るとしたら、どこで療養したいと思いますか。と問いかけたのです。
 結果、一般国民の47%が自宅で療養したいと答えました。
 現在は約80%の人が病院で亡くなっていますが、一般国民の半数近くが自宅で最期を迎えたいと思っているのです。
 さらに、医師は66・5%、看護師は69・3%、介護職員は61・8%が自宅で最期を迎えたいと答えています。
 むしろ医療・介護の担い手のほうが積極的に自宅で最期を迎えたいと考えていることが分かりました。
 現在、在宅医療を受けている患者さんは約71万人で、かなりの患者さんが在宅医療を受けています。
 さらに、地域の高齢化が急速に進み、2030年には在宅医療を必要とする患者さんが100万人を超え、2040年には約120万人となり、現在の全国の病床数と同じくらいの数になると予想されています。
 在宅医療の需要増加に比して、24時間体制で連絡を受け、往診することが可能な診療所は全国で1万4000件あまりで2016年以来ほぼ横ばいであまり増加していません。
 そして、在宅医療には医師や歯科医師ばかりでなく、訪問看護、訪問リハビリや薬剤師、歯科衛生士などの医療スタッフが必要です。
 加えて患者さんの療養生活の基盤を支える介護や福祉のみなさんの手助けがあってはじめて在宅医療が成り立ちます。
 地域包括ケアの中心的な役割を果たすことになる在宅医療ですが、最近のコロナ禍でそれぞれの担い手を確保することが困難になっています。地域の若い人たちには、ぜひ医療や介護・福祉の担い手になってほしいと思います。
 私たちの地域には、情熱を持って在宅医療を提供している先生がたくさんおられます。ほとんどの先生が外来診療を行いながらの在宅なので、大変なご努力です。
 そして、多くの患者さんを在宅で看取っています。
 厚生労働省の調査でわかったように国民の半数近くが在宅での最期を望んでいます。それを実現するために、ずっとご苦労を重ねています。
 少しでも先達の先生の手助けになればと思い、私も在宅医療を始めました。公立岩瀬病院から訪問診療に出かけています。
 まだまだ少ない数の患者さんですが、在宅での看取りも経験しました。
 亡くなった患者さんのご家族が「すごく迷いましたが、在宅での看取りに決めてよかった。」と仰っていたのが心に残っています。
 定年になったら在宅医療をはじめたいと考えていましたが、あらためて在宅でよかったと感じています。
 もう67歳になりましたが、私は在宅医療の提供を体が動くかぎり継続したいと願っています。

うつみね診療所 所長

三浦 純一

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