火曜コラム(紙面掲載 2024年4月23日)

三浦 純一


花やぐ季節

 訪問診療。次の患者さんの家に向かって運転する車窓から臨む美しい景色。春の訪れを一面に見せてくれる風景に心が躍る。
 冬の厳しい寒さを乗り越え、暖かな春風と共に花々が息を吹き返しているのが見える。そこに花たちの力強い生命力を感じる。清々しい景色。さまざま花の色の競演が季節の彩りを豊かにしているのです。
 そして桜の花が散り終えた後でさえ、地面はふんわりとした桜の花びらのピンクのカーペットで覆われ、次の新たな花々が生命のバトンを受けとり、春の彩りを競うように咲いています。色彩の豊かさに見ているだけで笑顔になってしまいますね。
 ここ須賀川では、自然に咲く花たちが私たちの心の情景と密接に結びついています。チューリップや菜の花が道端に咲き誇り、その個性豊かな花々が春の光を反射してまばゆいばかり。これらの小さな花々が、日常見ている風景に彩りを添え、私たちの心を和ませてくれます。
 元々日本人は、春が来ると花見や散歩を楽しむ風習があります。学校の子どもたちも、外での活動が増え、花の観察を通じて、花たちが自然の一部として成長していく姿を見ることができます。
 また地域によって開催される花祭りは、コミュニティをひとつにする大切な行事です。そこでは、地元の特産品が売られる、地域の芸能が披露されるなど、文化の交流の場となっていることが多いようです。
 春の訪れと共に、私たちは自然とともに生きることの喜びを再認識できるように思われます。須賀川の美しい自然と栄養豊かな土地が育む様々な花々は、私たちに多くのことを教えてくれます。
 たとえば自然のリズムに耳を傾け、それに合わせて生活することの大切さや、美しいものを愛でる心が人々の間にどれほど平和をもたらすかを、当たり前のように学ぶことができます。素晴らしい環境に私たちは住んでいるのです。
 自然に学ぶ。そして人として育っていく過程の中で花を愛し、その心を私たちの世代、次の世代、その次の世代へと伝えることで、この地域が若者たちも住んでみたい土地として発展できたら良いなと思います。
 この美しい季節、「花やぐ季節」に、もっともっと花を好きになってみませんか。地元の花々が私たちに示す自然との調和を学びながら、未来への道標として美しい花を咲かせていくために、花を楽しみながら次の世代のために何をするべきかを考え、今できることを考え行動に移しましょう。
 地域の花の美を愛し、その継承者・伝道師となることが、私たちが次の世代に贈ることができる最も美しい贈り物だと考えます。

うつみね診療所 所長

三浦 純一

うつみね診療所長 元公立岩瀬病院長