火曜コラム(紙面掲載 2022年1月18日)

三浦 純一


コロナ禍で気をつけたい高齢者の「むせり」

 新しい年、2022年がはじまりました。正月行事や成人式が終わり、ようやく普通の日常に戻ろうとしています。
 しかし、米軍基地をもつ沖縄県などを中心にオミクロン株による新型コロナウイルス感染症が全国で急速に拡大しつつあります。すでに第6波の巨大な波が来ていると思われます。
 第1波からはじまり第6波を迎えることで、この感染症とは長期間にわたり闘い続けなければならないと予測されます。
 そのコロナ禍の中で、高齢者のみなさんはウイルス感染からはじまる命の危険と向き合うことになります。
 高齢者が新型コロナウイルス感染で命を落とす原因はさまざまです。ウイルスそのものによる肺炎が重症化して死亡することが一番の原因ですが、他にもあります。
 高齢者は年齢が高いほど、持病を持っている確率が高くなります。
 よく指摘されている高血圧症、糖尿病は死亡リスクを高める大きな要因です。感染の後で、脳出血や腎不全など全身のいろんな器官が不調をきたし、次第に弱って亡くなっていきます。
 また、誤嚥(ごえん)性肺炎という唾液や食べ物を誤って気管の中に吸い込んでしまうことで発病する肺炎があります。自分の口の中にある多数の細菌が肺に入ってしまうことで肺炎が起こる疾患です。
 年齢が高くなると、どんな人でも少しずつ、物を飲み込む力すなわち嚥下力が弱くなります。
 食事の時に、むせることはありませんか。肺の中に食べ物の一部が入ってしまうので咳の反射が起きてむせるのです。
 誤嚥性肺炎を起こした経験がない人でも、食事の時にむせることが多い人は、新型コロナウイルス感染症が治っても、全身状態が落ち込むことにより、唾液に含まれた大量の細菌を誤まって肺内に吸引してしまい、肺炎を併発しやすくなります。
 この肺炎で命を落とす高齢者がわりと多いのです。せっかくコロナから離脱できたのに、最終的に誤嚥性肺炎で命を落とすのは本当に残念なことです。
 しかも、全身状態そのものが弱りきっているために、最新の医学を駆使しても助けることが困難なのです。
 この誤嚥性肺炎のリスクを少しでも減らすためにできることがいろいろあります。
 まずは常日頃からきちんと歯を磨いて口腔内を清潔に保つこと。そして虫歯は歯科の先生に診ていただいてしっかり治療します。口腔内の細菌が増殖しやすい環境を作らない工夫をしましょう。そして入れ歯が合わなくなった人はすぐに直してもらいましょう。
 次に食事の時にむせる人はかかりつけ医に相談してください。いろんなアドバイスをもらえます。そして必要な時は、嚥下の検査ができる病院を紹介してくださると思います。
 普段からの小さな努力が自分の命を救いますので、ぜひ実行してみてください。

うつみね診療所 所長

三浦 純一

うつみね診療所長 元公立岩瀬病院長