火曜コラム(紙面掲載 2022年3月29日)

三浦 純一


あきらめずに前に進めること

 公立岩瀬病院附属高等看護学院は大正2年に創設された岩瀬郡立病院附属看護婦養成所を前身として昭和28年4月に開設されました。令和4年4月に創立70年目を迎えます。
 学院の教育目的は「看護師として必要な知識および技術を教授し、社会に貢献する有能な人材を育成する。」ことです。
 これまで1800人近い卒業生を輩出し、地元須賀川市をはじめ周辺の市町村、福島県内そして県外に就職し、それぞれの地域医療を助けています。今年も29名の卒業生を送り出しました。
 第111回看護師国家試験は令和4年2月13日に行われ、受験者数6万5025人、合格者は5万9344人で合格率は91・3%でした。全国で6万人近い新人の看護師が誕生したのです。
 その中で公立岩瀬病院附属高等看護学院卒業生の合格率は100%でした。
 快挙です。よくぞ合格率100%の成績を残してくださいました。
 快挙と呼ぶには理由があります。今年の卒業生は在学中にコロナ禍の始まりから、ずっと新型コロナウイルスに翻弄されてきました。
 その困難な状況下で、合格率100%を達成した今年の卒業生と、それを指導してきた先生による快挙です。
 学生たちは授業を受ける権利がありますが、コロナ禍の中では登校できない時もありました。厳しいコロナ禍での学びは、学ぶ場所を提供されないことから始まったのです。
 戸惑いながらも、学生と先生は、国家試験合格という目標を見失わずになんとか勉学を前に進めたのです。
 テレワークによる授業を提供する先生は学生と同様に大変でした。短期間で遠隔授業の準備をして体制を整え、ひとつひとつの講義を作り出しました。担任の先生の努力は相当なものです。
 また、医療での学びは座学ばかりではありません。卒業後に社会で貢献できるスキルを身につけるには、病院での実習が不可欠です。
 しかし、コロナ禍にあっては、病院での臨地実習ができない、もしくは十分に実習できないことがたくさんありました。
 その際には、学院内で模擬実習をさまざまな工夫をこらして編み出し、実践してもらうことで学びを深めてもらいました。これも、学生たちを前に進ませようとする先生の努力です。
 看護師国家試験を受けるまでには、極めてたくさんのカリキュラムを消化しなくてはなりません。厳しい環境の中で彼らはくじけませんでした。
 コロナ禍という大きな負の圧力を跳ね返して、学びを前に進めようとする努力と創造力が身を結びました。そして合格率100%を達成したのです。
 学生と先生のこの経験が、お互いのさらなる発展を約束してくれそうで、楽しみです。
 これから社会人として活躍する公立岩瀬病院附属高等看護学院の卒業生が桜の花に祝福されながら前に進んでいくことを期待します。

うつみね診療所 所長

三浦 純一