火曜コラム(紙面掲載 2022年9月27日)

菊地 大介


翠ケ丘公園 万葉のひととき 第2回

 今回もまた翠ケ丘公園の素晴らしい魅力をお伝えしていきたいと思います。シリーズ企画第2段。それは翠ケ丘公園には万葉集の歌碑が60碑設置してあることをみなさんご存知でしょうか?
 まずそもそも万葉集とは何か?少し触れますと、今から約1263年前(西暦759年)の奈良時代に編纂された現在最古の歌集です。約四百余年間の歌を全20巻に4500首が収められ、その時代に生きた人々の真実の姿や心情が見事に表現されており豊かな人間性にもとづき現実に即した感動を率直に表しています。
 古人が喜びや悲しみを歌った万葉集の中には野の草や花木を詠んだ歌が多く1700首におよび登場する植物は150種にのぼるといわれています。
 翠ケ丘公園は豊かな自然が多くみちており万葉集で詠まれている植物も多く自生しています。そのようなことから、この翠ケ丘公園の植物の60種類が詠み込まれた歌が歌碑(石碑)に刻まれ、多くの市民が自然に親しみ郷土を愛する心と誇りを持つようにと設置してあるのです。森林浴をしながら園内を散策し万葉の世界にタイムスリップしてはいかがでしょうか?
 そこで公園内にある歌をシリーズ企画で一つ一つ紹介していきたいと思います。今回は第2回目になります。巻2の231、作者は笠金村「高円の 野辺の秋萩いたずらに 咲か散るらむ 見る人なしに」この歌の読み方は「たかまとの のへのあきはぎいたずらに さきかちるらむ みるひとなしに」。
 この歌は志貴皇子(しきのみこ)が亡くなったときに詠まれた挽歌です。
 「高円山の秋萩は空しく咲き散っているだろうか。志貴皇子が亡くなって誰も見なくなったいまも…」とは、なんとも寂しい歌ですが、秋に咲く萩の花の涼やかさがまるで志貴皇子の人柄そのもののようにも感じられて皇子を知る人々の悲しみをさらに誘うものになっているようです。
 秋萩とは一般に言われている萩のことで草冠に秋と書く字なのでまさに秋の花です。花の色は淡い赤で秋の花にちなんで「萩餅」から「御萩餅」そして「御萩(おはぎ)」と呼ばれるようになったようです。
 さあ、翠ケ丘公園内のどこにこの歌碑があるか?さっそく散策してみてはいかがですか?秋の萩ですから時期的にも今が旬です歌碑の周りに秋萩が生えていることでしょう。

まちづくり会社 株式会社こぷろ須賀川 代表取締役

菊地 大介