火曜コラム(紙面掲載 2022年10月4日)

三浦 純一


在宅医療

 令和3年7月から公立岩瀬病院で在宅の訪問診療をはじめました。病院の医師やスタッフをはじめ、訪問看護師、ケアマネージャーさん、ヘルパーさん、行政のみなさんの支援のおかげで診療を継続できています。
 今年9月までに30名以上の患者さんを看取っています。看取りの数の多さは私の想定外でした。9割はがん末期の患者さんです。
 その半数近くが私よりも若い年齢の方達でした。本当にお気の毒なことですが事実です。
 なかでも、今年8月は4週間で8名の患者さんを在宅で看取っています。訪問診療を始めた頃の予想を遥かに超えた看取りの数です。コロナ禍の中にあって医療を受ける患者さんやご家族の環境は様変わりしました。
 特に、病院に入院すると、クラスターを防ぐためにご家族との面会ができなくなります。面会の制限そのものは、コロナ禍の中で患者さんと、その他の患者さんの命を守るために行っています。
 しかし、患者さん本人からすると誰にも会えません。大切な人に伝えたいことがあっても電話やメールのみが頼りです。
 そもそも具合が悪くて入院している患者さんからすると、家にいれば普通にできることが困難になっています。特にがん末期の患者さんはきちんと告知を受けているので、ご自分の寿命があとどれくらいなのか、予想がついています。
 面会ができないと寂しいし、住み慣れた自宅で最期の時を過ごしたいと願うのは自然な流れかもしれません。
 環境変化の影響で患者さんやご家族が在宅医療に目を向けはじめています。
 そして、がん末期の患者さんから訪問診療を依頼されることが多くなりました。
 しかしながら、がん末期の患者さんの在宅での看取りは非常に難しいと感じています。
 最も大変なのは患者さんなのですが、ご家族も同様に大変です。
 医療側は緩和療法として麻薬などを用い、患者さんの痛みや苦しみを和らげる努力をしています。それでも、癌の進行が早いと緩和療法が追いつかない場面があります。その際にご家族は患者さんの痛みや苦しみを目の前で見ることになります。そのままご家族の心の痛みや苦しみになってしまいます。
 すぐに医師に連絡するか、もしくは訪問看護師さんに連絡した方が良いのか、判断に迷います。往診に来てくれた医師の処置で症状が治まると安心しますが、そのようなことが続くと心の負担がますます大きくなります。
 その負担を軽減するために医師と訪問看護師、ケアマネージャーさん、ヘルパーさん、そして行政のみなさんが地域の中で連携して患者さんとご家族を支えています。特に地域の訪問看護師のみなさんにはお世話になっています。
 そして最後に、以前から地域の在宅医療を支えていた訪問診療の先輩の先生がた、膨大な仕事量だったと思います。心から敬意を表します。

うつみね診療所 所長

三浦 純一

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