火曜コラム(紙面掲載 2023年5月23日)

三浦 純一


医療の新しい展開としての訪問診療

 現代社会は高齢化が進行し、介護や医療機関への通所・通院に困難を抱える人々が増えています。この背景から、近年注目されているのが「訪問診療」です。訪問診療は、医療機関から専門スタッフが患者さんの自宅や施設を訪れ、直接サービスを提供する形式の医療です。
 訪問診療の対象は、高齢者、身体的・精神的障害を持つ方、慢性病を抱えている方など、通院が困難な患者さんが主になります。詳しくは医師会やかかりつけの医師にお尋ねください。
 訪問診療の主な利点はいくつかあります。一つ目は、自宅や居住施設で治療を受けることで、通院の負担が軽減され、身体的・精神的ストレスが減少することです。二つ目は、病院での感染リスクを軽減することができることです。三つ目は、生活環境に適した療養計画を作成できることで、患者さんの生活の質を高めることが可能です。
 また訪問診療は医療者にとっても様々な利点を提供します。患者さんの生活環境を直接観察することで、生活状況、健康状態、支援体制をより深く理解することができます。これは、治療計画をより具体的かつ効果的に策定するための重要な情報となります。
 しかし、訪問診療には課題もあります。専門スタッフの配置や移動の効率化、緊急時の対応体制など、訪問診療を運営するにはそれなりの管理能力と協調性が求められます。個人情報の保護とプライバシーの尊重も重要な課題となります。
 訪問診療は、医療と患者さんとの新しい接点を生み出す可能性を秘めています。患者さんの視点からみれば、自分の生活環境で治療を受けることは安心感をもたらし、身体的・心理的負担を軽減します。医療者にとっては、個々の生活環境を理解し、より適切な医療サービスを提供するきっかけになります。
 一方で、訪問診療は広範な専門知識と経験を必要とします。薬物相互作用、栄養管理、リハビリテーションの手法など、幅広い領域についての理解が求められます。感染症の予防や緊急事態への対応能力も不可欠です。
 訪問診療の提供者としては、プライベートな空間に入っていくため、患者さんの信頼を得ることが最も重要です。これを可能にするためには、高い専門性と共に、コミュニケーション能力や配慮が求められます。
 訪問診療の推進は医療のあり方を再考する機会でもあります。これは、患者さん中心のケア、地域内での包括的な治療アプローチ、そして医療のデリバリー方法そのものを変えていきます。これからの超高齢化社会において、訪問診療はますます重要な役割を果たすと思われます。
 訪問診療が、患者さんやご家族の生活の質を向上させ、医療者と患者さんの新たなつながりを生むことを期待しています。

うつみね診療所 所長

三浦 純一

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