火曜コラム(紙面掲載 2023年9月12日)

三浦 純一


健康寿命と平均寿命

 私たちが健康で幸福な老後を過ごすために、健康寿命と平均寿命について理解しておきましょう。日本の健康寿命は男性で約73・2歳、女性で約75・2歳とされています。平均寿命は男性で約81・1歳、女性で約87・1歳です。女性では平均寿命と健康寿命の差は12年も開きがあります。
 その違いを理解することで、高齢者の生活や社会全体の健康への取り組みが、より適切になると期待されます。
 健康寿命は、寿命のうち健康で活動的に過ごせる期間を示す指標です。つまり、病気や障害による制約を受けず、自立して日常生活を営むことができる期間を指します。一般的な活動や社会参加を続けることができる期間と言えます。
 平均寿命は、誕生から死亡までの平均年齢であり、医療の進歩や生活環境の改善によって大幅に長寿化が進んでいます。平均寿命は国や地域の健康状態を把握する上で重要な要素となりますが、実際の生活にどれだけ健康で活動的な期間が含まれているかは示していません。
 いっぽうで、高齢者死亡率の変化が注目されています。65歳以上になると肺炎や老衰が悪性疾患や心血管疾患に次いで多くなるのです。医療技術の進歩により、疾患を持つ高齢者がより長く生きることが可能になってきました。
 しかし、単に寿命が延びるだけではなく、その人生を健康で活動的に過ごすことが大切です。
 したがって、これからは高齢者自身が積極的な行動を取ることが重要です。以下は、私たちが健康寿命を延伸するために行うべき行動の一部です。
 栄養バランスの取れた食事を摂ることで、体の健康を維持できます。野菜、果物、たんぱく質、良質な脂肪をバランスよく摂取しましょう。
 運動は筋力や柔軟性を維持するために重要です。ウォーキングや筋トレ、さらにはストレッチなど、日常的に運動を取り入れることが大切です。掃除などの家事も大切な運動になります。
 ストレスは健康に悪影響を及ぼす要因の一つです。リラックス法を覚え、趣味を楽しむことでストレスを軽減しましょう。
 健康状態を把握するために、定期的な健康チェックを受けることが大切です。疾患を早く見つけて、早く治すのです。
 社会とのつながりを保ち、友人や家族との交流を大切にしましょう。
 これらの行動のうちで最も大切なのは生きがいを持つことです。人生の最終章を豊かに過ごすために、社会のため、家族のため、自分のために生きがいを持ち続けるのです。それが健康寿命の延伸に大きな意味を持たせます。
 健康寿命と平均寿命は、高齢者の生活の質や社会の健康への取り組みに大きな影響を与えています。そして、高齢者自身が健康寿命を延伸するために積極的な行動に取り組んでいきましょう。
 個人の努力と社会的な支援を結びつけることで、より豊かな高齢期を迎えてください。

うつみね診療所 所長

三浦 純一

うつみね診療所長 元公立岩瀬病院長