火曜コラム(紙面掲載 2023年10月17日)

三浦 純一


認知症予防に向けたメンタルの持ち方
 ~長寿の鍵は心のあり方にある~

 超高齢化社会を迎えた現代では、認知症の高齢者が増え続けています。そのため、ご家族が認知症の介護に苦労し、疲弊しているケースが多くなっています。
 重症の認知症で苦しむ人々を増やさないために、認知症予防は中高年だけでなく、若い世代も関心を持つべき課題です。
 認知症を無理なく予防するには、身体的な健康だけでなく、本人のメンタルの持ち方が重要であることを意識しましょう。
 では、日常生活に取り入れることができる認知症予防に役立つ心のあり方について、3つの鍵的な要素を考えてみましょう。
 ①前向きな思考の醸成
 健康は心のあり方と密接に関係しています。前向きな考え方は脳の活性化に役立ち、ストレスの低減にもつながります。困難なことがあっても、それを経験として捉え、学びや成長のチャンスに変えることが大切です。
 また日常生活で小さな幸せやありがたさを意識することで、前向きな気持ちを持ち続けることができます。自分を励ますポジティブな言葉や瞑想も、心の安定と脳の健康に効果的です。
 ②社交性との関連
 人との交流は心の健康だけでなく、認知症予防にも欠かせません。友人や家族とのコミュニケーションを通じて新しい情報や刺激を得るだけでなく、新たな人間関係を築くことも重要です。趣味のクラスや地域のサークル活動に参加することで、新しい人々との交流を楽しむことができ、脳の活性化につながります。
 また他人の話を真剣に聞くことや自分の気持ちを共有することで、感受性や共感力も鍛えられます。
 社交の場で大切なことは、他人を批判しないことです。友人を失い、孤独になって会話がなくなり、認知症になりやすくなると結論づけている論文があります。相手に配慮した言葉を選び、穏やかな会話を心がけましょう。
 ③新しい経験と挑戦への積極的な取り組み
 脳は新しい経験や学びによって活性化します。新しいことを学んだり、自分に効果的な筋力トレーニング法を試したり、美しい風景をみたり、異なる文化をもつ地域を旅したりすることは、脳に新たな刺激を与えます。
 日常生活をふりかえり、より快適な生活を目指して定番のルーティンを時折変えることは、新しい発見や刺激を得る方法として効果的です。そして、クリエイティブな活動、たとえば絵を描くことや楽器を演奏することも、右脳を活性化させ、認知症予防に役立ちます。
 まとめとして、認知症予防に役立つメンタルの持ち方は、日常生活の中で簡単に取り入れることができます。
 みなさんのそれぞれの年齢、生活環境にあわせて、自分でメンタルケアを考え、実践するのです。
 私たちの未来の脳の健康に大きな影響を与えることを忘れずに、積極的に体もメンタルも健康的な生活を送ることを心がけましょう。

うつみね診療所 所長

三浦 純一

うつみね診療所長 元公立岩瀬病院長