火曜コラム(紙面掲載 2024年9月10日)

夏奈色ひとみ


カワセミのエール

 私のここ数年の趣味の一つが野鳥観察です。休日はよく、野鳥を見に近くの公園や水辺に出かけます。
 その時期その時期で見られるお目当ての鳥がいますが、ここ最近は、鳥の中でも人気の高い須賀川市の鳥でもある「カワセミ」を見ています。生息している場所近くに行くと高い確率で目にすることができ、喜々として写真に収めています。
 「飛ぶ宝石」「水辺の宝石」などと言われるように、あの翡翠色の姿はハッとする美しさですっかり魅了されています。
 人気が高いだけに、須賀川市の他にも多数の市町村で「自治体の鳥」の指定を受けているようです。
 カワセミは、警戒心が強く近づくとすぐ逃げてしまうため、遠くからこちらが先に見つけるのがポイントですが、私がよく目にするカワセミの中に、上の口ばしが短く少し凸凹していて、下の口ばしが長く、通常の上下対称ではない個体がいます。
 どうしてそうなったのか、生まれつきなのか、何かの時に上の口ばしの先が欠けてしまったのか・・・どちらにしても獲物をくわえづらそうに見えます。
 でも、しばらく観察していると、水上でホバリングし、狙いを定めてシュッと急降下で水中に入り、魚をくわえて飛んで行く姿を見ることができ、たくましく生きていると感じました。
 カワセミが描かれている絵本に、「カワセミとヒバリとヨタカ あべ弘士・小学館」があります。
 「それぞれの鳥はもちろん違い、得意なこと、できないことがある、それぞれがそれでいい。そして、チャレンジしてみることも大切、自分というものを知ることができる。」動物園の飼育員をされていたという著者の、魅力的で愛着が湧くイラストと生きもの全てへのエールともとれるお話です。
 無いものではなく、あるものに目を向けて感謝の気持ちを持つ、状況に応じて工夫していく、チャレンジしてみる、自分と違うものに対して思いやる・・・カワセミや生きものたちから教わることがたくさんあります。

絵本作家

夏奈色ひとみ

絵本作家