火曜コラム(紙面掲載 2025年11月5日)

夏奈色ひとみ


「土産話をおひとつ」

 先日のわたしの旅のお話を聞いて下さい。
 久しぶりの海外、準備もそこそこに必要最低限のものだけ押さえて、夕方仕事を終え翌日朝のフライトに備えてバタバタと成田へ。
 東京駅で成田行きのバスに乗るつもりが最終バスが終了。成田エクスプレスも終了。慌てて総武線の電車に乗り成田入り…。
 翌日朝、出発予定のセブパシフィック航空機が理由不明で3時間以上遅延、ようやく搭乗できたと思えば動き始めた飛行機がこれまた理由分からず延々と滑走路を走り続け…ようやく離陸、途中、気流でかなりの揺れがあり、一時は腹をくくるフライトに…。
 5時間強のフライトの後セブ島に到着、空港の出口にはたくさんのタクシーの客引きが…その中のタクシー会社の女性が料金表を手にまくし立て車両まで誘導され、すんでのところで我に返り拒否、あやうく800ペソと通常の4倍ほどの料金を取られかけ…。
 サファリツアーの日の朝、タクシー運転手からタイヤがパンクしたと連絡があり予定より遅れて出発、運転が荒くスピードを出すので車内はガタガタ揺れまくり、どんどん追い抜いていくバイクやトゥクトゥクに後ろから迫る恐怖のドライブに…。
 夕方、現地のセブンイレブンに行った帰り道、小走りしていたら、路上のあちこちにいる犬の数匹が吠えながら走り寄ってきて、驚いて立ち止まると犬も止まり、現地の人が犬をなだめて事なきに…。
 朝方、ホテルの部屋の暗闇の中でスマホを持って歩いていたら唐突に顔からカーペットに倒れ込み鼻を強打、鼻の傷が徐々に赤くなり、念のため現地の総合病院へ、その日の予定は泣く泣くキャンセルに…。
 とまあ、一言で言うと楽しい旅でした。
 楽しいと書ける今の状況に感謝で、詰めの甘さやドジさ加減など反省改善の余地ありですが、旅とは計画を立てても予定通りにいかないことがあり、それにどう対処しどれだけ楽しむかが醍醐味だと思います。
 海外に行くと「他を知って己を知る」ことができます。当たり前が当たり前ではないと気づき、こんな生活もあると知り、いざとなったらこんな人生の選択肢もあるという安堵感や希望を持てたり、現地の人と触れ合いその姿勢に感動し尊敬したり、親切や陽気さに感謝したりと、場所や人から触発され学び自分を見つめるいい機会です。
 最後に「長生きするものは多くを知る。旅をしたものはそれ以上を知る」―アラブのことわざより

絵本作家

夏奈色ひとみ

絵本作家