この地域で、ともに生きる
日本の高齢者人口は増加の一途をたどり、令和6年には65歳以上で3623万人、高齢化率は29・1%になりました。それに伴い寝たきりの問題も重要な課題となっています。現在、日本では約60万人の高齢者が寝たきりの状態にあり、その割合は高齢者全体の約1・5%です。
しかし、近年では寝たきりになる高齢者の数が少しずつ減少しており、その背景には健康寿命の延伸や介護予防の取り組みが寄与しています。それでもなお、寝たきりになるリスクは存在し続けており、その原因を理解し、対策を講じることが必要です。
寝たきりの主な原因としては、脳血管疾患や認知症、骨折や転倒、心疾患、加齢による筋力低下(サルコペニア)などが挙げられます。
これらの要因は身体的なものが中心ですが、見過ごされがちな要因として「意欲の低下」があります。意欲の低下は活動量の減少を引き起こし、筋力や体力の急速な低下を招くため、寝たきりへの大きなリスク要因となります。
意欲の低下は心理的な面が強く、個人の問題だけではなく、社会的な孤立や支援不足といった外的要因とも密接に関係しています。
また意欲の低下は、脳の前頭葉や側頭葉の萎縮とも関連が深いと考えられています。これらの領域は、意欲や意思決定、感情の調整を司っており、認知症の進行とともにこれらの脳の部位が変性していきます。それに伴い日常の活動や運動、社会参加が減少するという悪循環が進行してしまいます。
高齢者個人ではこの課題を克服することはできません。早い段階から周囲の人の手助け、さらには地域社会からの支援が不可欠です。
意欲の低下を防ぎ、寝たきりを減らすためには、地域全体での取り組みが求められます。まずは、地域社会での交流の場を増やし、高齢者が積極的に参加できる環境を整えることが重要です。運動教室やサークル活動、地域のイベントへの参加を通じて、他者との交流や身体活動の機会を持つことが、意欲の維持・向上につながります。
また家族や地域住民同士が支え合い、見守りや声かけを行うことで、高齢者が孤立することなく安心して暮らせる地域を作ることが求められます。さらに高齢者には食も大切なので世代を超えて一緒に食事をして旬の食材を楽しむ企画も欲しいですね。
私たち一人ひとりが助け合いを意識しながらともに生きることが、寝たきりを減らすための大きな力になります。日々の小さな関わりや気遣いが、高齢者の意欲を引き出し、生きがいを感じる生活へとつながります。
みんなで支え合い、寝たきりを防ぎ、すべての人が健康で豊かな生活を送ることができる地域を目指したいですね。
お互いに助け合いながら、ともに生きる姿勢が、未来の健康な地域をつくる鍵となるのです。