火曜コラム(紙面掲載 2024年11月19日)

夏奈色ひとみ


おとぐすり

「音楽は魂の薬である」―プラトン
 「音楽には情緒を発散させるカタルシス効果がある」―アリストテレス
 先日、市民公開講座「音楽療法とは何か」を聴講する機会がありました。
 私の中の音楽療法のイメージは、音楽を通してトラウマを癒したり感情を開放して心の回復を図る心理学的な側面を思っていました。 
 ほかにも医療が必要な状態の方のニーズに対応する「医学モデル」身体機能の回復等を目指す「リハビリテーションモデル」自立や生活の質向上のための知識等の獲得を目指す「教育モデル」社会文化的コミュニティの中の相互関係の健康を目指す「生態学的モデル」があり、様々な場面で活用されていることを知りました。
 音楽療法とは心身の健康のために人と人が音楽を分かち合うことであり、一般的な音楽より幅広く捉え、人によりそれぞれの音楽との関わり方は千差万別であり、正しい繋がり方という概念はないという考え方のもと、対象者、場所や背景、音楽療法士の3つの要素に合った治療法をすることです。
 介護ホームでの個人音楽療法の事例では、対等な人と人として接しながら、対象者の体験につながる音楽を探し、徐々に言葉とそれ以外のコミュニケーションが開かれていき、尊厳が生かされ、その変化がご家族にも波及していました。
 「その人の過去、現在、未来を全人的に理解するよう努めながら、歩調を合わせて、その人のために調整した音楽を通して対話をする」。 
 あらためて音楽療法士という仕事の尊さ素晴らしさを感じました。
 人は音楽に触れている時、「考える」「感じる」「動く」「人とかかわる」の全てを自然に行っているとのこと。
 私たちが日頃、好きな音楽を聴くとき、先述のギリシャの哲学者の言葉のように、特に意識していなくても自分を癒したり鼓舞したりしているのでしょう。
 あなたが郷愁を感じる歌はなんですか?心震える楽器の音色はありますか?

絵本作家

夏奈色ひとみ

絵本作家