火曜コラム(紙面掲載 2025年4月22日)

夏奈色ひとみ


行くべき街・誇れる街

 今年のサクラも散り始めていますが、この時期、車窓から流れる景色を見ていると、(あ、あそこにも!あ、ここにも!)と、遠くからでも目立つ薄いピンク色の花が我ここにありと主張しているのを感じます。
 サクラといえば、私が印象に残っているのが、以前訪れた盛岡市の地方裁判所敷地内にある樹齢350~400年とも言われるエドヒガンザクラ「石割桜」です。
 どっしりとした丸みを帯びた周囲21㍍もある花崗岩の中心は雷で割れたと言われ、そこから太い幹を伸ばす国の天然記念物。生命力、命の偉大さを象徴するような圧巻の姿に、しばし時を忘れて見入りました。
 今でも成長と共に年々数㍉単位で石を割り続けているというこのサクラには、それを守った庭師のエピソードがあります。
 昭和7年9月2日裁判所が火事になり、庭師で元消防団員でもあった藤村治太郎翁がいち早く駆けつけて、着ていた半纏を水で浸しサクラの幹に巻きつけ、自ら口にケガを負いながらも他の団員と力を合わせて火が回るのを防いだというお話です。
 その後も庭師をはじめ周りの人々が手当てし続けてきたおかげで、現在も私たちは石割桜に感動をもらえるのです。
 盛岡市といえば2年前、ニューヨークタイムズ紙が発表した「2023年行くべき52カ所」の2番目に紹介されたことは記憶に新しく、東北が選出されたことに注目し嬉しく思いました。他に福岡市も19番目に選ばれました。
 ちなみに昨年は山口市が3番目に、今年は30番目に富山市、38番目に大阪市が入りました。
 我がまち須賀川市もサクラはもちろん、素晴らしい自然や歴史、伝統、文化など誇れるものがたくさんあります。当たり前にあるように感じる自然や環境も実は貴重なものであったり、歴史や伝統、文化を深掘りするとその尊さや先人たちの功績にあらためて感銘を受けたり…。
 そして私が思う一番の地域の宝は、前述の石割桜のエピソードからも思うように、まずはそこに住む人だと思います。人のあたたかさや思いやりでその地域が成り立ち、伝統や文化が守られているのです。 
 そんな私たち地元民が感謝と誇りをもって日々人間力を磨き成長しながら、須賀川市の良さにフォーカスし、より良い街を目指し地元愛を語っていきたいですね。

絵本作家

夏奈色ひとみ

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