火曜コラム(紙面掲載 2021年2月16日)


  • 画像

バーテンダー 野木 卓

Wanna Be Startin’ Somethin’

 今年もあっという間に大寒を過ぎ、バレンタインデーの季節がやってきました。思わず春の足音に期待してしまう様な日々が続きますが、皆さんはこの自粛要請期間をいかがお過ごしになられたでしょうか。

 私もこのコラムが掲載される頃には、仕事が再開出来ればなぁ…と願う一人です。もう少しです。皆さんで乗り越えていきましょう。

 さて、今回はバーで行われるトークの内容ではなくバレンタインデーに因んでチョコレートの国ベルギーで造られるトラピストビール(修道院で造られるビール)についてお話していきたいと思います。コラムを読んだらきっと飲んでみたくなりますよ。

 時代は中世、ヨーロッパではワインやビールが生産されていました。それは飲用水の確保が難しいという、その土地ならではの問題があったからです。

 日本では馴染みの無い感覚ですが、当たり前に水が飲めなければ保存出来る飲料を造らなければいけません。その為、ヨーロッパではワインやビールの生産が発達していったのです。

 トラピストビール。居酒屋ではあまり聞かないでしょうし、晩酌として愛飲する方も少ないかと思います。説明として修道院で造られたビールと記述しましたが、それだけだと皆さんはどんな印象を受けるでしょうか?

 私は若い頃に説明書きを読んだ時に、「ん?海外のお坊さんが造ったビール?」と違和感を覚えました。宗教とビールの製造が結びつかなかったのです。

 現在では「クラフトビール」等の言葉が認知され沢山のビールがスーパーでも並びますが、当時の日本のビールの製造は大手の酒造メーカーの独壇場でした。日本の大手酒造メーカーは日本食に合う素晴らしいビールをきちんと造っていましたからね。

 さてさて、そんな感じで私が当時「美味しいの?」と疑問に思っていたトラピストビールですが…飲んでビックリ!旨いんです、コレが。

 私のそれまで飲んでいたビールのイメージは「食べ物に合うお酒」でした。

 しかし、トラピストビールは「俺に合う食べ物を持ってこい!」という主張がハッキリ聞こえてきます。

 こいつぁ~凄い!と、当時飲んだ時にビールの新たな可能性や方向性が頭の中にブワッと広がっていったのを今でも覚えています。

 そんな体験を通してトラピストビールにハマっていった私がお薦めする銘柄は沢山ありますが、その中でもまるっきり飲んだ事が無い方にはベルギーのシメイ・ビールをお薦めします。

 簡単に説明させて頂きますが、シメイ・ビールがトラピストビールとしてシメイ醸造所で造られ始めたのは1862年となっています。当時は地域の失業者に仕事を与える為だったと言われています。

 現在シメイ・ビールが一般販売しているのは3種類。その中でも「シメイ・ブルー」は瓶内二次発酵するビールとして人気があります。瓶内二次発酵、つまりヴィンテージ(冷蔵庫で寝かせる事)で味が変わるという事です。

 ビールは一般的に「作りたての旨さを」というイメージがあります。事実それは間違っていませんし、作りたてのフレッシュなビールは勿論旨いのです。

 しかしそれは、ビールの種類によっては当てはまらない事もあるのです。ヴィンテージが決して正義ではありませんが、ヴィンテージに興味が沸いてきた方にもうひと押し。5年寝かせたシメイ・ブルーを飲んでみて下さい。「シメイ・ブルーは5年寝かせた方が良い」と発言したマイケル・ジャクソンと同じ気持ちが味わえますよ。

 どうですか皆さん。シメイ・ブルーを飲んでみたくなりましたか?

 ベルギーのチョコレートと合わせて楽しむも良し。マイケルのCDと合わせて楽しむも良し。

 何気ない一日を特別な一日に書き換えて、フラストレーションを消化しちゃいましょう。