楽しそうな父鬼
「こんばんは、マスター。今日はウイスキーお湯割りで頂戴。」
「寒い中ありがとうございます。銘柄はお勧めで宜しいですか？」
「歩いて帰るし、ガツンとバーボンにしようかな。そろそろ節分だけどマスターはイベントとかするの？」
「特別しませんね。お付き合いのあるお店に恵方巻きを注文させて頂く事はありますが。どうぞ、お湯割りです。」
「あれも商業的で不思議な風習だよね。西から来た風習でしょ？」
「そうですね、確か大阪発祥だと言われてますね。」
「福を呼びたいってのはまぁ分かるけど、その手段が太巻き寿司ってのが面白いよね。」
「私達が子どもの頃なら楽しみにしていたでしょうね。」
「現代っ子達はいいもん食べてるからなぁ…。そういえば、節分に因んだお酒ってあるの？」
「節分用ってのはあまり聞きませんが、普通に『幸運をお酒で呼ぶ』という風習やゲン担ぎは世界中に沢山ありますよ。日本で最近始まったのは恵方呑みというのがありまして、恵方を向いて日本酒を飲むという風習ですね。」
「あらら、なんでもありだね。楽しめる風習であればいいってのは現代的で共感出来るけど。」
「お酒は楽しむのが１番ってところに辿り着くのかもしれませんね。」
「マスター、申し訳ないけど今日は早めにお会計にしてくれる？」
「おや、珍しいですね。明日はお出掛けですか？」
「我が家では鬼側がセルフで色々用意するから、明日はお面と豆を仕入れに行ってくるよ。」
「それは何よりですね。ご家族で仲良く楽しんで下さい。」
「おやすみ、マスター。今年こそしっかり泣かせてくるよ。」
