火曜コラム(紙面掲載 2022年3月8日)

野木 卓


白酒の歴史

 皆さんは「白酒」をご存知でしょうか?ひな祭りに飲まれる甘酒みたいなもの、と認識されているあれです。今回はひな祭りと白酒についてのお話をさせて頂きます。
 白酒は(しろざけ)と読みます。中国にある白酒(パイチュウ)とは全くの別物でパイチュウがアルコール度数30~50%に比べて、しろざけはアルコール度数9%となります。それでもビールよりは強いので、きちんとアルコールは感じますし甘さもあります。
 白酒を飲む「ひな祭り」は元々日本古来の「人形(ひとがた)信仰」と中国の「上巳(じょうし)の節句」が結びついて生まれたものとされています。
 人形信仰は紙や草で作った人形で体を撫でて穢れ(けがれ)を人形に移し、その人形を穢れと共に海や川に流す「流し雛」の原型とされています。
 上巳の節句では邪気を祓うとされる桃の花を清酒に浸した「桃花酒」が飲まれていました。それが桃の花に合わせた色合い(白濁色)に変えられていき味も飲みやすく改良され、江戸時代には白酒を飲む習慣が広がっていったようです。桃花酒に浸す桃(百百)の花は百歳までの健康祈願を意味します。
 人形と白酒(厄祓いと健康祈願)がタッグを組んで、現在のひな祭りが形作られたのです。
 古来の風習に現代的な価値観やアレンジを加えブラッシュアップしていく祭事や文化は世界中にありますが、現在の「ひな祭り」は中々に詰め込んだ感じがしますね。「健康一番」の考え方ははるか昔からずっと変わらないのでしょう。
 お時間が取れる方は図書館や博物館で歴史や文化をお子さんと一緒に学んでみてはいかがでしょうか。毎年通り過ぎていた当たり前の年間行事を、より一層楽しめるはずです。

バーテンダー

野木 卓

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