火曜コラム(紙面掲載 2023年5月16日)

夏奈色ひとみ


絵本でしあわせな時間

 「絵本」というと、子どものものと思う方も多くいらっしゃるでしょうか。近年、絵本は子どもにとどまらず大人の方にもとても人気があります。基本、小説などと比較して読み易く内容も分かり易く、文と絵が相乗効果をもたらす、文学と絵画の総合芸術だと思います。
 絵本の読み語りは、子どもにとてもいい効果をもたらすと言われ、就寝前などお子さんへ読み語りをされている親御さんも多いのではないでしょうか。
 子どもは、そのお話の中に自ら入って物語を疑似体験していると言われます。
 これは、その子の人生にとってなんと豊かな貴重な経験でしょう!同じ絵本を何度も繰り返し読んでとせがむのは、またその世界に入り楽しく冒険したいと思っているからだと言われます。
 食べものや歯みがき、トイレなど生活習慣に関する絵本や他者との関わりを描いた絵本などは、それを読んで聞いてもらうことで、しつけにつながり思いやりの気持ちを育むことにもつながります。
 絵本は言葉の能力が高まる、想像力や感情が豊かになるなどの効果はもちろんですが、私が思う絵本の一番の良さは、子どもが自分のために読んでくれていることを肌で感じること、読んでいる人から子どもへの愛情が伝わることだと思います。
 それでは大人にとっての絵本はどうでしょう。何より絵本を読むことで、癒しやリラックス効果を得ることができるのは絵本の素晴らしさです。
 最近よく「自己肯定感」という言葉を耳にしますが、効果的な絵本を選び読むことで、それが高められるとも聞きます。
 昨年、「大人にも絵本」というイベントに参加した時の話です。 
 大人は絵本を読んだとき、自分の今までの経験から物語の奥にあるものを読み解く傾向があるので、人によっていろいろな解釈があり、絵本の意見や感想を出し合うと、なるほどそういう見方もあるのかと学びや気づきがあるということです。
 そして絵本を通しての会話は対立がなく、違う意見も素直に受け入れられるのですと伺い、確かにそのとおりだと頷きました。
 また、その際に披露された福音館書店の方の「大人は子どもに『命、名前、言葉』の3つを与える」という言葉がとても印象的でした。
 私たち大人は、子どもたちに、絵本の読み語りも含めて日頃から愛あるあたたかな言葉をたくさんかけていきたいですね。
 ぜひ、大人も子どももたくさんの絵本に触れて、日々の多忙な生活の中でも、ちょっとした豊かなしあわせな時間を持っていただきたいと思います。

絵本作家

夏奈色ひとみ

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