火曜コラム(紙面掲載 2023年5月30日)

西間木 恵理


「サティヤ」YOGAの教え ~ Yamas(禁戒)「Satya」~

 YOGAというと、まだまだ体を動かすエクササイズのイメージが強いと思いますが、古来より伝承されてきたYOGAの経典には、八支則という日常生活における心構えなど、「人との繋がり(社会生活)の中でどう生きるべきか」という、実践的な修行法が示されたガイドラインがあります。
 【八支則〈①ヤマ:してはいけない5つのこと②ニヤマ:すると良い5つのこと③アーサナ:様々なポーズの練習(身体的)④プラーナヤーマ:呼吸のコントロール(呼吸法)⑤プラティヤハーラ:感覚のコントロール⑥ダーラナ:意識の集中⑦ディヤーナ:瞑想⑧サマディ:神と一体・悟り】があります。
 今回はその最初の①ヤマ:してはいけない5つのことの中から「サティヤ」という教えについて書いてみたいと思います。
 「サティヤ」とは、“不嘘・誠実”と訳され「本当の自分をあざむかず、正直であること、嘘をつかないこと」という意味になります。
 “そんなの当たり前!”に聞こえたかもしれませんが、実はこれを上手く実践できている人は少ないかもしれません。特に日本には「本音と建前」という言葉があるように、その場の空気や、物事を円滑に進めるための「建前」を使う文化があります。
 もちろん有効に「建前」を活用することは大切ですが、「嘘」になることは避けなければなりません。自分のために使う「嘘」と相手の気持ちを尊重する「建前」は全くの別ものです。
 また逆に、いくら「真実」であっても、相手を傷つけてまで正直さを突き通す言動は、ただのハラスメントであり「サティヤ」ではありません。
 この「本音と建前」を日常的に使っていると、自分の本心まで分からなくなってしまうことがあります。他人への正直さより難しいのは、「自分自身への誠実さ」です。
 解説の一節に「サティヤ(誠実)に徹したものには、その言葉が現実(結果)になる」とあります。
 つまり、「サティヤ」を実践し、極めた人には“真実を引き寄せるパワーが強まり、偽りが自然と避けてくれるようになる(真実が味方になる)”ということが書かれています。 「嘘の言葉を発しない」「心の中でも偽りの思考を抱かない」など、まずは自分に嘘をつかない実践が「サティヤ」の基本であり、YOGAの大切な修行の一つなのです。
 ちなみに、他者との円滑なコミュニケーションスキルを身に着けたい方は、ぜひ「アサーション」を参考に、「アサーティブな会話」を実践してみて下さいね。
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ヨガ+ライフアッププロデュース

西間木 恵理