火曜コラム(紙面掲載 2023年6月20日)

夏奈色ひとみ


空とラムネと短歌と

 私が短歌を作り始めたのは、比較的最近のことです。
 我が子が幼児期の頃、地元に帰省した折に、義父がふいにさりげなく手渡してくれたのが俵万智さんの短歌集「プーさんの鼻」でした。その歌集には、俵さんが子育て中に生まれた短歌が収められていて、その一冊との出会いは、幼い我が子と何かと感情豊かな日々を過ごしていた私にとって、同じ母親として共感し心揺さぶられたり、ひとつの物事から湧き上がり紡ぐ言葉の感性に感嘆したり・・・と、とても幸せな時間でした。
 それから私も子どもと空を見上げたり、ラムネを飲んだりした何気ない日々の出来事を気軽に短歌に詠んでみようと思い、五七五七七のリズムに収まるように指で数えながら作り始めました。
 すると、なるほど私にとって日記を書くよりやり易く、思い出の記録にもなり、一つの作品が生まれたという充実感が持てました。
 そして、子どもとのかけがえのない日々のことを客観的に、多くは幸せな気持ちで思い返すことができて、時に夢中になって詠みました。
 そんな時は、兼好法師の徒然草の冒頭「つれづれなるままに・・・」の文の最後「あやしうこそものぐるほしけれ」とはこいう気持ちのことなのかと思ったりしました。
 これから先、いずれ一冊の短歌集にし、子どもたちが巣立つときにそっと手渡してあげたい、たとえ未熟な親であったとしても、その一冊から一瞬一瞬の愛を感じてもらえたら、そして、もしこの先に暗闇を感じることがあった時、その一冊が一筋の光となってくれたら、と密かに思っています。
 須賀川市は俳句のまちですね。多くの方が俳句や川柳、短歌を楽しまれているかと思いますが、私からも、一つの趣味としておすすめです。一句、一首できると、それが唯一無二の自分の作品で嬉しくなると思います。
 ウルトラFMが開局して間もない頃、短時間でしたがラジオの生放送に出させていただいたことがありました。その時、短歌の話をし、皆さん今の気持ちを一首、と無茶振りで、スタッフの皆さんにも詠んでもらいとても楽しい時間でした。そのとき私が詠んだ歌です。
 「汗にぎり思い言の葉 波に乗せこの醍醐味はウルトラキュー」

絵本作家

夏奈色ひとみ

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