Deep World
「マスター、今晩は冷えるね。」
「いらっしゃいませ。彼岸が過ぎればやはり夜は冷えますね。本日は何を召し上がりますか?」
「今日は洋食屋さんでワインを飲んで来たから、〆に1杯もらおうかな。」
「でしたら甘くて重いものが本日のラストに相応しいかと思います。」
「ありがとう、任せるよ。」
「ではブランデーにアプリコットを入れ、そこにレモンとオレンジを加えます…。どうぞ秋のオリジナルです。」
「今の季節にピッタリの色合いだね。ん!これは甘くて美味しいね。」
「ありがとうございます。今の時期は甘いものが美味しく感じますよね。」
「ゆったりと昔の映画でも観ながら味わっていたくなる…。そんな不思議な懐かしさも感じるよ。」
「レシピとしましてはオールドスタイルですし、特別珍しい物は使用していません。しかし、だからこその懐かしさや王道の美味しさが感じれますよね。」
「変わらない良さってやつだね。」
「カクテルってのは面白い物でして、何の味か分かりやすくないと流行らないんです。例えば、ジントニックを飲みたい人は味をイメージしてオーダーしますよね?」
「なるほど。リピートしたくなるには想像しやすい味と個性が大事なんだね。」
「そうです。ジンの個性とライムの酸味、トニックの苦味と甘み。複雑に聞こえるのに、飲んでみればそれはジントニックとして認識されている。そういう個性とまとまりのあるレシピが最高なんです。」
「いつまでもメニューに残り続けるカクテルには、きちんと理由があるんだね。」
王道だけでも200と言われ未だに増え続けるカクテルレシピ。この奥深い世界を秋の夜長に楽しんでみてはいかがでしょうか。