火曜コラム(紙面掲載 2024年2月6日)

夏奈色ひとみ


白鳥のメッセージ

 年が明けたと思ったら、もう一月が終わり、二月に入りましたが、私には今の時期ならではの楽しみがあります。
 休日、近くの池や湖に白鳥に会いに行くことがここ数年の私の癒しなのです。
 冬鳥である白鳥は、晩秋、日本に飛来しますが、繁殖地であるロシア領のシベリア等が極寒で、氷に閉ざされて餌もとれなくなるため、比較的温暖な日本に来て冬を過ごすと言われています。
 私が会いに行く白鳥は、主にオオハクチョウで、からだも大きく美しく優雅です。他の野鳥と比較しても警戒心が強くなく、比較的近い距離で観察でき、目が合うと思いが通じるような気がして癒されます。
 幼鳥はグレーの毛で、親鳥の後をついて泳いでいる姿がかわいらしいのですが、遥か3000キロ~4000キロも離れた場所から飛んで来たことを思うと、そのたくましさに胸打たれ、その壮大な物語に思いを馳せ、出会えたことの喜びを感じます。
 今年は例年より、白鳥の数が少ないと感じるのは私だけでしょうか。もしかしたら暖冬で、福島県より北の方のより寒い地域に多く飛来しているのかもしれません。このような事象にも、温暖化の影響が表れているのでしょうか。
 国境など関係なく行き来する白鳥。
 北国で玄関から外に出た時、近くの公園で車から降り立った時、頭上から高い特有の鳴き声が聞こえてふっと空を見上げると、白鳥がⅤの字に並んで飛んでいました。
 飛びながら白鳥は、私たち人間のどんな姿を見ているのでしょう、人間はどの様に見えるのでしょう。
 よく、広い視野で全体を把握するという意味で「物事を俯瞰する」と言いますが、私が言うなら、まさに白鳥の目線で自分自身を見つめて考えることが大切だと思います。
 須賀川市が誇る俳句の世界では、「白鳥」は冬の季語ですが、「白鳥帰る」や「鳥帰る」という春の季語もあることを知り、とても趣を感じました。
 そろそろ少しずつ春の気配を感じ始め、シベリアへ「白鳥帰る」季節が巡ってきますね。
 みんな地球の仲間。そんなメッセージを残して。

絵本作家

夏奈色ひとみ

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