サプライズ・カクテル
「いらっしゃいませ。いつも有難うございます。こちらへどうぞ。」
「こんばんはマスター。今日は少し相談があって来たんだ。今度奥さんの誕生日に旅行に出掛けるんだけど、旅行先のバーで何か気の利いたカクテルを用意してあげたいんだ。ちょっとしたサプライズの一杯を選んでくれるかな?」
「分かりました。それは是非協力させて下さい。奥様の好みを教えて頂けますか?」
「食後の一杯で、度数は強いのも好きかな。マンハッタンやサイドカーを甘めにしたようなのが好みだね。」
「なるほど…。今思い付いた一杯がありますのでお作りします。アマレットをベースにブランデーやカシス等を加えてシェークします。どうぞ飲んでみて下さい、こちらはヴェルジーネというカクテルです。サントリー第1回カクテルコンペのリキュール部門優勝作品になります。」
「これは綺麗な深い色だね。いただきます…ん!凄いねこれ。上品な甘さで酸味と苦みも少しあるし、ドッシリと重さもある。」
「それに加えてカクテル名は天女を意味します。奥様の好みのテイストで誕生日の一杯にも相応しいかと…。」
「うん、これは納得の一杯だよ。」
「因みに難易度は一般的で材料もバーにはあるものですから、観光地のホテルバーでもきちんと作ってもらえると思います。」
「色々と気を使ってくれて有り難う、マスター。旅行から帰ったら夫婦で一緒に来るよ。」
「お待ちしております。素敵な記念日になるといいですね。」
星の輝く秋の夜長に、日頃の感謝を込めた一杯のサプライズ。色鮮やかなカクテルは、色褪せない夫婦の素敵な思い出として心に留まり続ける事でしょう。