「伝える」
14年前、私は神奈川県の海沿いに住んでいました。
アパートの敷地内には小さな池があり、亀が顔を出したり、青サギが羽を休めたり。海風や潮の香りを感じながら、ゆったりとした時間が流れていました。
そのとき、突然感じた大きな揺れ。
池の水が右に左に大きく揺れ、大量の水があふれ出しました。
震源から遠く離れた神奈川の地にいる私でさえ、只事でないという緊張感に胸が締めつ
けられました。
故郷がたいへんなことになっていることを知ったのは、それから少ししてからのこと。
急いで福島の両親に電話をしましたが、電話はつながらず、まもなく私が住む町にも大津波警報が発令されました。
公務員だった夫は避難所対応のため避難所に待機、私はひとり、不安な時間を過ごしたことを覚えています。
しかしそんな私の不安なんて比べものにならない、想像できないくらいの大きな恐怖や不安を感じながら日々を過ごしていた人が、たくさんいたこと・・・。
私は福島に帰ってきて、自分から東日本大震災の話はしないようにしていました。
私がどれだけ自分の体験や不安を言葉にしたとしても、「大変だったでしょ」とそれらしき言葉を並べたとしても、福島で震災を経験した人の気持ちは、私が想像する範囲には絶対に収まらないと思うから。
でも、震災の記憶が風化していくのを何もせずに見ているのは違う気がします。
私にできること、それは、東日本大震災があったという「事実」を伝えていくことかもしれません。
他人の気持ちを代弁したり、何かを教示したりすることは、私は得意としませんが、事実を伝えることはできそうです。
幸い私はコミュニティーFM「ウルトラFM」でパーソナリティーをしています。
ウルトラFMは、東日本大震災をきっかけに始まったコミュニティーラジオです。
ウルトラFMのパーソナリティーとして、GALATA COFFEEとして、情報はもちろん、それにとどまらず文化をも発信&伝える役割を担う存在でありたいと思います。