火曜コラム(紙面掲載 2025年10月28日)

沢田 隆志・はな夫妻


手も口ほどにものを言う

 高校生への調査で、「生き生きとエネルギーに満ちた顔つきの生徒のお弁当は“おにぎり“であることが多い」というデータがあるそうです。
 お母さんやその高校生のことを思う人が「手」で握ったおにぎりには、パワーがあるのだろうという仮説です。なるほど。たしかに、「手」には何かパワーのようなものが宿っている気がしなくもないなと感じます。
 日本語には「手」のつく言葉がたくさんあります。「手紙」「手入れ」「手際」「手応え」・・・。そしてその中には、人の温もりや思いが伝わってくるような言葉も多く見られます。
 例えば、「手伝い」という言葉。「手を伝える」「手を伝って動く」というのが語源で、手から手へ力を伝え合って一緒に動くことを意味しています。
 そして、「手当て」という言葉。私には「手当て」の思い出があります。調子を崩して色々うまくいかず意気消沈していた頃、帰省して祖母の家に遊びに行った時、祖母が「大丈夫。」と言いながら私の背中に手を当ててくれました。
 その祖母の手の感触と温かさは、今も忘れられません。背中に当てられたその手はとても優しく、エネルギーにあふれていました。祖母の手の温もりが、背中全体に広がっていく感覚だったのを覚えています。
 「手当て」は、読んで字のごとく「手を当てる」ことから生まれたのだといいます。
 傷や痛むところにそっと手を当てて癒そうとする行為。それがやがて「治療」や「処置」を意味するようになり、さらに「お給料」や「補償」などという意味をも持つようになったのだそうです。
 これらの「手」がつく言葉に共通しているのは、手が単なる身体の一部ではなく、人の心を映す役割を果たしているということ。
 手から伝わる温もりやパワーは、便利な機械やAIでは代わりがきかないもののような気がします。
 実は珈琲を淹れるときの手の所作がスマートだと、不思議とおいしい珈琲に仕上がります。そのときのいい感じの心の状態が手を通して珈琲に伝わっているのかもしれませんね。

GALATA COFFEE

沢田 隆志・はな夫妻

GALATA COFFEE代表 ウルトラFMパーソナリティ