プリン食べられても「和」
大阪の実家に帰省したついでに、奈良の法隆寺に行ってきた。これが3回目なのだが、初めて訪れたかのような感覚になったのは、おそらく桜の花が彩りを加えていたからだろう。
世界最古の木造建築物である西院伽藍や、飛鳥・奈良時代の文化財など、その素晴らしさを語り出せば切りがない。
今回法隆寺を訪れた目的のひとつは、御朱印帳を買うこと。実家の母が持っている伏見稲荷大社の御朱印帳のセンスが良くうらやましかった。法隆寺であればそれを上まわる物が手に入ると思ったのだ。
国宝だらけの寺院を参拝後、御朱印帳を購入した。予算を超えた価格だったので迷ったが、聖徳太子二歳像が描かれたデザインがとても気に入った。
すぐに御朱印をお願いすると、慣れた手つきで筆を動かす所作が美しく感激した。中心に書かれた「以和貴為」の四文字は非常に力強く、そして優しい。
日付まで書き終えると、「『和をもって貴しとなす』と読みます。聖徳太子さまの十七条憲法の第一条の言葉です。」と説明があり、「何事においても皆が仲良くやり、いさかいを起こさないのがよい」といった意味だと付け加えてくれた。
あまりにも有名なこの言葉の解釈は色々あると思うが、現代社会において、「和」とは単なる仲良しや表面的な平和ではなく、違いを受け入れ、調和を目指す姿勢そのものを意味しているのではないだろうか。
情報が瞬時に世界中を駆け巡り、価値観も多様化する中で、しばしば意見の違いや対立に直面する。SNSでは言葉が過激になり、些細なことで人を攻撃するような風潮も見られる。
そんな現代に疲れているのか、聖徳太子が1400年前に説いた教えが妙に胸に突き刺さった。
私は買っておいたプリンを妻が食べてしまったくらいでイライラしてしまうようなタイプの人間だ。そんな私が初めて買った御朱印帳の最初のページに書かれた言葉として、「以和貴為」は実にぴったりではないか。