火曜コラム(紙面掲載 2026年6月17日)

夏奈色ひとみ


ブンジュ村からのメッセージ

 先日、ペンキ画家SHOGEN(ショーゲン)さんの講演を聞く機会がありました。
 SHOGENさんは、自分を必要としてくれる全国の学校を無償で回り、許可を得た壁や車に子どもたちとペンキで絵を描く活動を通して生きることの楽しさや喜びを伝える活動をしています。お話はとても興味深く心揺さぶられ引き込まれるものでした。
 幼少から静かで友だちも少なかった彼は高校卒業式、式が終わったあと友人たちと車に乗っていて交通事故に遭い重症を負い、たまたまその場所が病院の前で助かり、目が覚めた彼は魂が入れ替わったような感覚で意識が変わり笑うようになったと言います。
 社会人になり、京都の雑貨屋でティンガティンガというアートと運命的な出会いをし、会社を辞めてタンザニアへ渡航、日本人として初めてそこを訪れた村民200人ほどのブンジュ村などで絵を学び、太陽や土、動物などの自然と会話できるという村民から多くの教えや気づきを得て私たちに伝えています。
 現地の人々は、それはそもそも日本人の心だと言うそうなのです。彼は現地で「ここにいない人」というあだ名をつけられ、「過去か未来の話しかしないよね、人生をこなしているだけ、生きることは一瞬一瞬その場に心がいること、人と話すときは抱きしめるように話すんだよ」と小さな子たちから指摘されたそうです。
 その暮らしの中で「みんな凹凸で生まれてきた、それはみんなで一緒に補い合って生きていく喜びを味わうため、誰かが何かをできない時は『かわいいね』と言えばいい、人はできないことで愛されるもの、生きることはいかにムダだと思うことでも楽しむかだよ」などハッとする気づきをもらったと言います。
 現地の女の子ザイちゃんが流れ星を捕まえに行くと言い、冗談だと思ったら、そのお父さんたちも「行ったことあるのか?やってみないとわからないだろう?」と真剣な眼差しで出かけて行った、そのエピソードから生まれた絵本「やってみないとわからないでしょ」は鮮やかで美しいイラストと文章に感銘を受ける私の大好きな絵本です。
 今、私の家には6色のペンキで下書きなしで描いた動物たちとザイちゃんの、生き物と境界線のない愛に満ちた絵が飾られています。ぜひみなさんもそのアートに触れて、本来持つ日本人の心について考えてみてください。

絵本作家

夏奈色ひとみ

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