火曜コラム(紙面掲載 2026年9月1日)

夏奈色ひとみ


心を照らす芸術

「芸術とはコミュニケーションです」
 これは、現代日本画を代表する千住博さんのお言葉です。
 春に福島市で開催された「二人の巨匠、東山魁夷と千住博展」に行った時のお話です。
 目の前に現れた大きな千住先生の滝の絵は、まさに神そのものとも思えるような、言葉も出ない厳かさを放ち、音のない静謐な世界で流れ落ちる圧倒的な水の力を感じると同時に、一瞬、滝の音が轟きわたり、霧状のしぶきが頬に当たってくるような感覚にもおそわれる、圧巻の作品でした。
 何ものも一切寄せつけないという不動の意思と、相手に合わせていか様にも形を変えることができる水の究極の優しさの二面性を感じました。
 他に、半世紀ぶりの一般公開となる東山魁夷の原画「風吹く浜」や、杉山寧、高山辰雄の秀作にも存分に浸ることができました。
 鑑賞後は、千住博先生と俳優のなべおさみさんの貴重なトークショーの映像も見ることができました。
 軽井沢に自身の美術館をお持ちの千住先生はダンディなお方で、なべさんは芸術への造詣が深く交友関係の広いお方で、お二人のお話は学びある興味深いものでした。
 その中で印象的だったお言葉をいくつかご紹介します。
 滝を描きたいと思いハワイでスケッチした時に気づいたのが、滝は時間を表している、空間を表している、すなわち宇宙である。芸術は、今の世に足りないものを補完して完成させる役割、不穏な時代、そこにない調和を描いた芸術が必要である。能登半島の復興支援の際に地域の方々が美しい絵を観たいと言っていた、芸術は人に寄り添い励まし勇気を与えることができる、画家は世の中に彩りを与える役目である。絵描きは、愛の表現、私が木ならどうだろう…私が滝ならどうありたい…私が湖なら何を映したい…と対象物と同化し心を通わせて描く。花が美しい、音色が美しい、食事が美味しい…これが美的体験、「美」は人に勇気や生きる力を与えます…。
 この展示会は場所を変えて、磐梯熱海温泉「四季彩一力」で9月末まで開催され、名画鑑賞プランで宿泊した方が鑑賞できるようです。
 また、今年の4月、千住先生が喜多方市の京都大徳寺別院にそれぞれ色合いの違う滝の襖絵を12枚寄贈したとのこと、近い将来一般公開されコミュニケーションが図られることを期待します。

絵本作家

夏奈色ひとみ

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